『ハレンチ学園』に『マジンガーZ』、『キューティーハニー』など数々の名作を世に送りだしてきた漫画家・永井豪氏。1972年から1973年にかけてメディアミックス作品として発表された『デビルマン』は悪魔をヒーローとした漫画だが、時代劇のような勧善懲悪や主人公の強さのみを描いた作品ではなく、人間の弱さ・醜さを描いているところが魅力のひとつだろう。そして、テレビアニメ『デビルマン』の後に漫画を読んだ場合“グロさ”に驚いてしまうようなシーンも多々ある作品として、発表から50年がたった今も語り継がれている。
そこで今回は、昨年50周年を迎えた漫画『デビルマン』で、トラウマになった人間たちの蛮行をいくつか振り返りたい。
■悪魔殺しのために水爆ミサイルを使用
主人公・不動明は、親友・飛鳥了に諭させれて悪魔と合体し、「デビルマン」となった。それは、「悪魔(デーモン)」が200万年の眠りから復活し、人間がデーモンに対抗するためだという。デビルマンとなった明は、「シレーヌ」「ジンメン」などの強敵デーモンを倒していく。
ところが、あるときから人間が怪物化して怪死する事件が多発する。これは、理性状態の人間にデーモンが合体すると、拒絶反応を起こし死んでしまうためだ。もちろん、デーモン側もこの合体の原理については知っている。しかし、あえて理性ある状態の人間と合体し怪死することで、人間を恐怖と混乱に陥れようとした。
そして人間がデーモンに対抗するためにしたこととは……水爆を落とすこと。ソ連領のツリングラードという地域に落とされ、その地域は消滅したとのこと。たしかに、水爆を落としたことでデーモンを抹殺できた。しかし、そこにいたデーモンの数十倍、数百倍の人間が犠牲になった。
デーモンの侵略を阻止するためとはいえ、無関係な人間たちまで犠牲にする必要があったのだろうか。
■デビルマンを捕らえて、生体実験
続いての蛮行は、デビルマンの体を使った生体実験だ。デビルマンといっても、不動明のことではない。デビルマンとは、悪魔の体を持ちながらも人間の心を持つ者を指す。前述したデーモンの無差別合体攻撃で、偶然にも拒絶反応を起こさなかった少女がいた。この少女は酸を吐くデーモンと合体し、誰にも言えず悩んでいた。ところが、不良少女からイジメを受けていたときに激高し、酸で不良たちを殺してしまった。
その後彼女は捕らえられ、ノーベル賞受賞者である雷沼教授の生体実験に利用されてしまう。
頭部にヘッドギアをはめられ、体のいたるところにコードを繋がれ、電流を流される。酸の体液を吐き出しながら苦痛に悶える少女。実験というよりも拷問といっても差し支えない。デーモンをよく知らない人間にとっては、デーモンもデビルマンも変わらないのだ。
デビルマンは体はデーモンだが、心は人間。漫画の終盤で明が悪魔特捜隊本部を襲撃した際に、「きさまらは人間のからだをもちながら悪魔に!悪魔になったんだぞ!」というセリフがあるが、この言葉に共感せずにはいられない。