「プリントゴッコ」「ママレンジ」「トミーおりひめ」持ってるだけで人気者? 子ども心をガッチリ掴んだ“すごい機能”だった昭和玩具たちの画像
『プリントゴッコ』(編集部撮影)

 2023年9月4日に玩具メーカー・ピープルは知育人形『ぽぽちゃん』の生産終了を発表した。

『ぽぽちゃん』は1996年から25年以上にもおよぶロングセラー商品で、人間の赤ん坊に似せた姿やさまざまな機能により、小さな子どもが赤ん坊のお世話を疑似体験できる玩具。この知らせにX(旧ツイッター)を中心としたSNSでは、我が子にぽぽちゃんを与えた親御さんや育った世代などから惜しむ声がぞくぞくと寄せられた。

 昭和・平成初期の子ども時代には、おもちゃのテレビCMがいくつも流れていたが、それらもいつの間にか店頭で見かけなくなったもの。特に子どもでも高品質の手作りが楽しめたおもちゃは、上位交換機の登場などにより消えることも少なくはない。そこで今回は、何かを「作る」機能に特化した昭和玩具をふり返る。

■女の子の憧れ!小さなホットケーキが本当に焼けた…ママ・レンジ

 1969年(昭和44年)にアサヒ玩具が発売した『ママ・レンジ』は、団地を中心に増え始めたシステムキッチンのガスコンロを模した玩具だ。本体の電源コードをコンセントに差し込むことで電熱コイルが熱せられ、テフロン加工された付属のフライパンやフライ返しを駆使し、時間はかかったものの直径10cm程度のホットケーキがきれいに焼けた。つまり本商品では電気コンロで行う本格的な「おままごと」ができたのだ。

 しかし「焼く」機能は危険が生じるため、本商品の最高温度は実際のコンロよりは低く設定されており、フライパンを外すと自動で電源が切れるなどの安全対策がなされるも、子どもの火傷は多かった。とはいえ、本商品のヒットを受けアサヒ玩具はマドレーヌなどが作れた『ママ・ケーキ』、お砂糖で綿あめが作れた『ママ・スイート』などの「ママ・シリーズ」を発売。筆者も友だちの家で『ママ・クッキー』を使った記憶がおぼろげにあるが、当時どれもが結構なお値段ばかりで子どもの「買って!」に、どの家庭でも親の財布のヒモは固かったはず。 

 販売元のアサヒ玩具は1971年にアメリカから輸入し一世を風靡した『アメリカン・クラッカー(カチカチボール)』、1975年に発売されたコミカルな『氷かき ぺんぎんちゃん』などのヒット玩具を世に送り出すが、1980年のモスクワオリンピック騒動の余波で1982年に廃業する。

■家庭で手軽にカラフルな印刷が楽しめた…プリントゴッコ

 昭和の小学生にとってお正月といえば、おせち料理やお年玉以外に友だちとの「年賀状」も楽しみのひとつだが、全部手書きは大変なうえ、イモ版や消しゴム版にも限界がある。そんな悩みを解決したのが、理想科学工業が1977年(昭和52)年に発売し爆発的なヒットとなった『プリントゴッコ』だ。

 プリントゴッコとは、電球の熱を利用し作った版(マスター)に専用インクを流し込み文字通り「プリント(印刷)」する家庭用簡易印刷機で、最初はB6サイズ内(ハガキより少し大きめ)の印刷が可能である。日本国内では主に年賀状印刷に重宝がられたため、年末にもなると文具店以外の小売店でもプリントゴッコの消耗品や専用画集が山積みで置かれるほどの季節商品として定着していった。筆者もかなり後になって購入したが、自作のメモや便箋などを紙を変えていろいろ作った覚えがある。

 ところが、1990年後半から家庭でのパソコン普及率は急速に上昇し、それにともない高性能なプリンターが安価で販売された。つまり、年賀状制作の地位はプリントゴッコから、宛名印刷も簡単なパソコンへと移行していったのだ。

 一方のプリントゴッコも、版の精度やズレを少なくした商品の開発、現行の2倍の大きさ(B5)の他に布への印刷を可能にした機種、送られた写真をフルカラー印刷できるよう版を三色分解するサービスを開始。さらにプリントゴッコの強みを生み出すため、家庭用プリンターでは表現できないメタルカラーや蛍光色など多種類インクの販売といった模索を続けた。ところが、理想科学工業は2008年にプリントゴッコ本体販売の終了を、2012年に事業終了を発表した。これによりユーザーはインクなどの消耗品が購入できず、プリントゴッコの色鮮やかな年賀はがきは姿を消すこととなる。

 1980年代にバンダイから発売された『レターメイト』は、お友だちとのお手紙交換など女の子から絶大な人気を得たヒット商品だ。本商品はダイヤル交換により平仮名や片仮名、ローマ字と少ない漢字なども楽しめた「簡易タイプライター」だが、一行打つのにも根気と慣れが必要だった。その後ワープロの登場により『ワープロメイト』が発売されたが、こちらはパソコンと携帯の普及で(メールに)その座を奪われてしまう。

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