■まだまだいる! 手塚治虫作品のスターたち
『ふしぎなメルモ』の主人公であるメルモは、ミラクル・キャンデーを食べることで大人になったり子どもに戻ったりできる少女だ。その特性を活かして一人二役ができるのが彼女の面白いところ。「座頭医師」(2巻)ではなんと母娘の役を同時(?)に演じ、「木の芽」(15巻)では患者の母親と同級生の役を担当している。
そのほか、子ども役でも大人役でもさまざまなエピソードに出演しているメルモだが、なかでもしみじみと心に残るのが「お医者さんごっこ」(10巻)だ。
この話でメルモは病に侵された幼い少女・チャコとして登場し、“ブラック・ジャック先生になおしてほしい”と言って聞かない。彼女の兄であるガキ大将・コングは悩みに悩んだ挙句、役者の息子で演技が上手な同級生・キートンにBJのフリをしてほしいとお願いすることに……。コングは普段キートンをいじめていたのだが、可愛い妹の願いを叶えるため頭を下げたのだ。
妹を思う兄の心やそれに応えようとするキートンの姿がいじらしく、オチも含めてほっこりとさせられるエピソードである。BJの影が薄めなところ(しかしキメるところはばっちりキメるところ)がまた良い。
最後に紹介するのは『ジャングル大帝』の主人公・レオだ。
彼は「白いライオン」(12巻)にて、アンゴラ共和国から日本にプレゼントされた“世界に珍しい白いライオン”のルナルナとして登場する。ルナルナは原因不明の病にかかってしまい、飲まず食わずで日増しに弱っていっているという。
治療を依頼されたBJはルナルナを家に連れて帰るが、考えた末に彼が選んだ方法とはいったい……? ルナルナにメロメロになり、猫可愛がりするピノコの姿も必見である。こちらのエピソードもラストがちょっと微笑ましい。
今回取り上げたのはほんの一例で、ほかにも『リボンの騎士』のサファイアや『三つ目がとおる』の写楽など、さまざまなキャラが『ブラック・ジャック』に登場してきた。ちなみにBJ自身は他作品でも“BJ本人役”として登場することが多いが、『火の鳥 望郷編』ではならず者のフォックスという別人を演じている。
『ブラック・ジャック』に限らず、手塚作品を読むときに“スターシステム”を意識してみると、新たな発見があって面白いかもしれない。