■菅原道真と在原業平が名コンビ?『応天の門』

 何とビックリの平安時代をテーマにしているのが、灰原薬氏による『応天の門』(新潮社)だ。しかもミステリーで、主人公が在原業平と菅原道真という教科書以外であまり見ない名前だから面白い。

 菅原道真は学問の神様として知られており、彼を祀る天満宮には多くの受験生が合格祈願で訪れる。では在原業平はどうだろうか。百人一首が好きなら「ちはやぶる~」でおなじみだが、何を成し遂げたか今一つ掴めない。

 しかし『応天の門』では一味違う。この二人は名コンビとして都の怪事件を解決していくのだ。まったく対照的な二人だが、どちらも非常にキャラが濃くちょっとしたやりとりも面白い。

 在原業平は何というかプレイボーイで、いってみれば女の敵(いや男もそうだ)である。菅原道真も何を考えているのかよく分からない。彼の優れた記憶力と観察力は驚異的で、どこかやる気の見えないところもあるが、事件解決に欠かせない決め手も持ち合わせている。武士でなく貴族が力を持っていたことにもうなずけるというものだ。

 それにしても業平よ。手当たり次第に女性に手を出しているが、夜這いしているのはバレバレだと思うのだが……。

 

 ここで紹介した歴史漫画3選は時代も古く、他に比べると資料に乏しい。しかしいずれも、面白く読み応えがある仕上がりになっている。登場人物が実在の者もいれば架空の場合もあり、史実を活かしつつ盛り上げてくれるものだ。

  1. 1
  2. 2
  3. 3