『遮那王 義経』に『応天の門』も… 戦国時代より前を舞台にした面白い歴史漫画3選の画像
応天の門 1 (BUNCH COMICS)/新潮社

 歴史の授業といえば、眠たくなる人も多いことだろう。だが、ゲームや漫画などのメディアによって戦国時代や幕末は人気が高い。しかし、それより前の歴史となると「授業で習ったっけ?」と思い出せないこともしばしばあるもの。そこで今回は、戦国時代より前を描く面白い歴史漫画3選を紹介していこう。

■義経が影武者!? 打倒平家に燃える『遮那王 義経』

 戦国時代や幕末に続いて人気があるテーマといえば、平安末期から鎌倉時代の幕開けとなった源平合戦といえるだろう。もちろん日本史が誇る武将の“源義経”が人気の中心だ。そんな義経を主人公にしている作品は多い。だが、彼がまさかの影武者だったという設定で感動を呼ぶ面白さなのが、沢田ひろふみ氏による『遮那王 義経』(講談社)だ。

 主人公の漂太は孤児で“軒下一座”の一員として芸者をしており、牛若丸(義経の幼名)に瓜二つ。替え玉として屋敷に連れてこられたのだが、外の世界を知らない牛若丸に同情して話を引き受ける。だが、この牛若丸は若くして死ぬ運命にあり、死期が近づく中で必死に学問に励み、漂太に打倒平家を託して16歳でこの世を去った。

 牛若丸の悲願を共に成し遂げるため、漂太は源義経として成長し、清盛や教経といった強大な平家と対峙することとなる。もちろん、史実と同様に頼朝や義仲といった源氏との微妙な緊張感も面白い。とはいえ、この漂太は武将というよりも現代っ子的な思想を持ち、思ったことを率直に打ち明け、周囲を引き込んでいく。

 彼の言動に心を動かされた人物は敵味方ともに多く、家臣となった弁慶や佐藤兄弟たちだけでなく、頼朝や藤原秀衡、清盛といった歴史に名を残す超大物までもが惹かれてしまう。実は女性陣も例外ではない。同じ軒下一座で白拍子のりんや謎の多いくノ一のようなかすみ、可愛らしい雑仕女の杏、義経一途の水樹など、皆一様に好意を持っている。

 源平合戦を扱っている作品は平氏を悪にするのが主流だが、この作品では義経のライバルとなる平教経の葛藤も大きな共感を呼ぶ。要所に笑いと感動を織り交ぜており、源平合戦の結末を史実で知っていたとしても読むのを止められない面白さだ。

■元寇の残酷さを物語る『アンゴルモア 元寇合戦記』

 鎌倉時代のテストで必ず出題されたのが“元寇”だ。いや、漢字では書けないぞ!という人も多いだろう。実はモンゴル帝国(元)によって、日本が滅亡していたかもしれないほどの大軍が九州に攻め込まれていた。この元寇は2回もあり、特によく知られるのが1274年の文永の役である。これを見事に作品化したのが、たかぎ七彦氏による『アンゴルモア 元寇合戦記』だ。

 舞台は対馬で、圧倒的な元の大戦力に対し、流刑者の朽井迅三郎(くちい じんざぶろう)と地頭代の娘・輝日姫(てるひひめ)が中心となってゲリラ戦を仕掛けていく。もちろん、史実では対馬が惨状に見舞われており、これは作中でも描かれている。爽快な場面もあれば、胸が痛むシーンも見られ、特に輝日姫を最後まで守っていた女剣士・鹿乃にまつわる描写は残酷すぎるだろう。

 この元寇は九州の博多上陸からが有名で、対馬を舞台にしているのはなかなかない。アクションゲームで大ヒットした『Ghost of Tsushima(ゴースト・オブ・ツシマ)』で対馬や元寇に興味を持った人も多いはず。そんな人にはぜひ本作もあわせてチェックしてみてほしい。

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