■型にハマらない使い方はどこか絶望的…“特殊能力”活用編
漫画作品といえば“特殊能力”が登場するのも醍醐味の一つだが、なかには生まれ持った“特殊能力”によって歯を武器として活用したキャラクターも登場している。
2014年に『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載が開始された堀越耕平氏の『僕のヒーローアカデミア』には、“個性”と呼ばれる特殊能力を持ったキャラクターが登場するが、歯に関する能力でヒーローたちを苦しめたのが、敵連合の一人であるムーンフィッシュだ。
ムーンフィッシュは脱獄した死刑囚で、口以外の全身は黒い拘束具に包まれている。他人の肉体を切り刻むことに快感を覚えるシリアルキラーで、意思の疎通が取れない非常に危険な存在だ。
彼の“個性”は「歯刃」と呼ばれるもので、己の歯を刃に変え、相手を切り裂くことができるというもの。しかもこの能力、歯を伸び縮みさせたり、分岐させることもできるため、離れた相手を切り裂いたり、取り囲むといった形でも利用可能だ。しかも伸ばした歯を長い手足のように使うことで、自身の肉体を移動させることまでできてしまう。
拘束具からあらわになった口元から大量の歯が伸び、迫ってくる姿は対峙する者からしたら悪夢のような光景かもしれない。歯そのものを変形させて操るという、トリッキーかつどこか恐ろしいディティールを持つキャラクターである。
■もはやなんでもあり!?…番外編・“歯”を活用した味方キャラクター
1979年から『月刊コロコロコミック』(小学館)で連載されたすがやみつる氏の『ゲームセンターあらし』では、あまりにも破天荒な形で歯を用いたキャラクターが登場してる。
それこそ、本作の主人公・石野あらしだ。作中ではあらしがさまざまな強敵とゲーム対決を繰り広げていくのだが、毎度、人間離れした超人的な大技で相手を撃破していくのも、ある種の“お約束”となっている。
あらしといえば、赤いキャップと巨大な“出っ歯”が特徴なのだが、その歯までもゲーム対決に活用。出っ歯を使ってまるでキツツキのようにレバーを操作したり、高所から落下し、まるでドリルのようにボタンを押したり、抜けかけている歯の神経を利用して遠隔操作……などなど、その型破りすぎる大技の数々に視聴者は度肝を抜かれた。
冷静に考えると、わざわざ歯を使う必要性はあるのだろうか……という疑問は残るが、本作の勢いを前にしては、そんなものは野暮というものだろう。
その硬さや鋭さを存分に活用し、“武器”として戦いに活用される“歯”。人間が誰しも持ち合わせている器官でありながら、漫画キャラクターたちが見せつける凄まじい破壊力に、どこか驚かされてしまう。バトルはもちろん、ゲーム対決にも用いるなど、作品ごとにまるで違うテイストで描かれているのも面白い点だろう。