我々が食事をするうえで、食べ物を噛みきり、押しつぶし、砕くといったさまざまな用途に用いられる“歯”。あらゆる生物にとって重要な器官だが、漫画作品ではこれを“武器”として扱い、激戦を繰り広げた強敵たちが登場している。そこで、“歯”を用いた珍しい戦い方をする、漫画キャラクターたちについて、カテゴリごとに見ていこう。
■切れ味や咬合力に思わず脱帽…“近接武器”として活用編
歯は人体の部位のなかでも水晶と同じくらいの硬さを持つことから、鍛え上げた顎の力と組み合わせることで強力な武器へと進化させることができる。
1991年から『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載が開始された、板垣恵介氏の『グラップラー刃牙』には鍛えた肉体に加え、“歯”による噛みつきで戦うファイターであるジャック・ハンマーが登場している。
ジャックは対戦相手の腕や足といった肉体はもちろん、闘技場を囲っている柵の木板や、繊維が複雑に絡み合ったヤシの実を噛みちぎってみせた。初登場時から凄まじい“歯”の力を見せつけたジャックだったが、ストーリーが進行するごとにこの噛みつきもパワーアップ。
ステーキの骨を当たり前のように食いちぎり、釘を口のなかで結ぶといった芸当はお手の物。戦闘で歯をすべて欠損してしまうも、その後チタン製の歯を入れることでさらなる進化を遂げ、やがては彼独自の格闘術・“嚙道(ごうどう)”なるファイティングスタイルを確立していた。
“最大トーナメント編”ではこの噛みつきによって多くの勝利をもぎ取っており、主人公・範馬刃牙とも激闘を繰り広げている。
皮膚や肉を引きちぎられることで起こされる大出血はもちろん、神経や骨まで損傷するその一撃は、対戦相手にとって脅威以外のなにものでもないだろう。
また、人間とは異なった種族ゆえに、生まれつき強靭な“歯”を持つキャラクターも登場している。
1997年から『週刊少年ジャンプ』(集英社)で連載されている、尾田栄一郎氏の『ONE PIECE』には、ノコギリザメの魚人・アーロンが登場し、その凄まじい身体能力で主人公・ルフィらを苦しめた。
ノコギリザメゆえに鋭利で強靭な歯を持つ彼だが、作中では石の柱や砲弾を噛み砕くという人間離れした芸当を見せている。加えて、彼の歯は何度でも生え変わるため、自ら取り外した歯を手にはめて攻撃する「歯(トゥース)ガム」のような特殊な使い方が可能。
さらには高速回転しつつ、削岩機のように攻撃を仕掛ける「鮫・ON・歯車(シャーク・オン・トゥース)」など、彼ならではの破天荒な歯の使い方を披露していた。
強力な武器であることはもちろん、破壊しようが自ら引き抜こうが、何度でも再生できるというその特異性こそ、彼の持つ“歯”の最大の特徴といえるだろう。