「あのシーンでもしこうなっていたら、どんな話になっていたんだろう……?」漫画やアニメを見ていて、こう思った経験がある人は多いはずだ。本編で描かれなかった”もしも”の物語を空想するのは、読者や視聴者の特権といえる。
しかし、ときには公式が自ら”もしも”を語ることがある。たとえば、鳥山明氏が生み出した名作『ドラゴンボール』(集英社)原作のTVゲームシリーズでは、原作にないIFストーリーが多く描かれており、そのクオリティたるや「IFこそ『ドラゴンボール』ゲームの華」と語るファンも多いほどだ。
今回は、数ある『ドラゴンボール』ゲームで語られてきたIFストーリーを見ていこう。
■アックマンがフリーザを倒す『ドラゴンボールZ Sparking! METEOR』
2007年に発売された『ドラゴンボールZ Sparking! METEOR』(バンダイナムコゲームス 現:バンダイナムコエンターテインメント)。本作には、アックマンが大活躍するIFストーリー「意外な救世主編」が収録されている。
アックマンといえば、原作第103話で登場した悪魔族の武闘家だ。子どものころの悟空に完敗し、それっきり原作に登場しないいわゆる“サブキャラ”なのだが、こういったキャラが抜擢されるのもIFストーリーの面白いところだ。
本編でアックマンが戦う相手は、なんとメカフリーザとコルド大王。原作通り悟空に復讐しようと地球にやってきたフリーザたちを相手に、アックマンが大暴れ! 手下をなぎ倒し、メカフリーザやコルド大王とも渡り合うアックマンがなんとも痛快だ。「子どもの悟空に負けたアックマンがなんでフリーザと戦えるの……?」などと考えてはいけない。
ちなみにアックマンの代名詞「アクマイト光線」も使える。相手の邪心を増幅させて体を爆発に追いこむ技で、ほんの少しでも悪い心を持つなら効果がある必殺技だ。原作では邪心が一切ない悟空に無効化されたものの「アクマイト光線で誰でも倒せるんじゃない?」と考えた読者も少なくないだろう。
鳥山氏から「たぶん相手に当たらないし、もうそんなレベルの闘いじゃないんだと思います」と言われてしまったアクマイト光線も、本作ではちゃんと当たる。それどころか、イベントでアクマイト光線を放つとメカフリーザもコルド大王も一撃KOできてしまうのだ。すごい。
メカフリーザ、コルド大王を倒したアックマンが最後に「ちょいと歴史を変えちまった気もするが…」とつぶやいて「意外な救世主編」は幕を閉じる。トランクスの出番がなくなってしまったことを考えると、歴史を変えすぎである。
■ラディッツと悟空が絆を育む『ドラゴンボールZ Sparking! NEO』
次は『ドラゴンボールZ Sparking! NEO』(バンダイナムコゲームス 現:バンダイナムコエンターテインメント)から、ラディッツが主役のIFストーリー「運命の兄弟編」を紹介しよう。
悟空を仲間にしようと地球にやってきたラディッツは、偶然見つけたピッコロに襲いかかる。原作ではピッコロを圧倒するラディッツだが、本作では苦戦を強いられ、戦いの影響で記憶喪失になってしまう。
自分が誰かもわからないままさまようラディッツは、偶然にも悟空との再会を果たす。不安がるラディッツを見た悟空は、記憶が戻るまで一緒に過ごすことを提案する。原作ではありえない、ラディッツ・悟空兄弟の団らんの始まりだ。
ふたりの兄弟は修行を重ねながら少しずつ絆を深めていく。記憶を失って臆病になったラディッツに、悟空が自然体で接する描写がとても尊い。ラディッツが悟飯と仲良くなり「おじさん」と慕われるのも、原作ファンとしてはぐっと来る展開だ。
ストーリーの終盤で、ラディッツはサイヤ人としての記憶を取り戻す。しかし兄弟の情を優先したラディッツは、宇宙ポッドに乗って地球を脱出。地球に迫るベジータたちが乗る宇宙船と接触し、閃光とともに姿を消す……以上が「運命の兄弟編」のあらすじである。
「原作でもこうなってほしかった」と語るユーザーも多い、人気の感動エピソードだ。