■37歳になった「金田一少年」

 面白いのが原作・天樹征丸氏、漫画・さとうふみや氏による『金田一37歳の事件簿』。1992年から『週刊少年マガジン』(講談社)にて連載され、ドラマ化やアニメ化もされている『金田一少年の事件簿』から20年が経過した世界となっており、主人公の金田一一も37歳になっている。

 2018年に『イブニング』で連載開始(2023年4月26日から漫画配信アプリ「コミックDAYS」に移籍)し、現在も連載中だ。

 1話では無精髭を生やした金田一一が起床し会社に向かうところから物語がスタートしており、隣に住むシングルマザーに鼻の下を伸ばしたり、会社でうだつが上がらない様子を見せたりと、一はお世辞にもかっこいいスマートな大人になっているとは言い難い。

 しかし音羽ブラックPR社に務める一は仕事の関係で、かつて3度の殺人事件が起きた「オペラ座館」のあった歌島にまた訪れることとなる。「もう謎は解きたくない」と思っている一の前で、また事件が起こるというあらすじだ。

 20年経った姿は妙に親しみやすいが、冴えた推理を見せていた一がこんな大人になるとは少しショックである。もちろん、高校生当時からちょっとスケベでお調子者な一面はあったが……。

 2018年公開の、ディズニー作品『くまのプーさん』が実写化された『プーと大人になった僕』でも、登場人物が大人になっている。

 同作は、大人になった主人公のクリストファー・ロビンをユアン・マクレガーが演じており、クリストファーには愛する妻と娘もいる設定。しかし仕事に追われる日々でなかなか家族との時間が取れない。そんな彼の前に、100エーカーの森を飛び出したプーさんが突然現れる。プーさんが、忘れてしまった本当に「大切なモノ」とはなんなのかを教えてくれる物語は、仕事で疲れた日々を送る大人になってしまった我々の心にも刺さるものがある。

 慣れ親しんだ少年少女時代と姿は変わっても、応援したくなる気持ちはあの頃のまま。彼らの成長した後の物語には、「エモい」「懐かしい」という言葉では表しきれない感慨がある。

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