■『ドラゴンボール』ヤジロべー

 鳥山明氏による『ドラゴンボール』(集英社)に登場するヤジロベーは、今回紹介する中でもちょっと変わった経緯をたどったキャラクターだ。初登場時にはピッコロ大魔王の部下のシンバルを倒してみせており、悟空と互角とも言える強さを見せたことからも、これから活躍するキャラクターの1人だと期待した。しかし、それ以降はほとんど登場しないまま存在感を失っていき、モブキャラに成り下がってしまう。

 しかも悟空たちがベジータと戦っている時は、怯えながら陰で見ているだけ。しかし、そのまま何もできずに終わってしまうかと思われたヤジロベーは、大猿になったベジータの尻尾を切って悟空たちのピンチを救ったのだ。もはや読者の誰もヤジロベーに期待していなかっただけに、これはかなり予想外の出来事だった。

『ドラゴンボール』にはヤジロベーのように、モブキャラと思いきやキーマンとなるキャラクターが他にもいる。それがミスター・サタンとブリーフ博士だ。ミスター・サタンは、魔人ブウの戦いで動けなくなったベジータを救出し、ブリーフ博士は宇宙船の改造で悟空をバックアップしていた。どちらもいなかったとしたら、その後のストーリー展開が成り立たなかっただろう。

 

 バトル漫画に登場する、普段はモブキャラにしか見えないながらも、要所で思いがけない活躍をするキーマンとなるキャラクターたちには、誰もがあまり期待していないからこそ、彼らがその真価を発揮するときには驚かされることがある。そして、その印象が鮮烈であればあるほど、いつかまたその機会が訪れるのではないかと再登場を心のどこかで待ち望んでしまうのだ。

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