■1人の生徒がクラス崩壊を招いた『こどものおもちゃ』
最後は、1994年から『りぼん』で連載された小花美穂氏の漫画『こどものおもちゃ』に登場した羽山秋人を紹介する。同作は、小学生の恋愛だけでなくいじめ、捨て子といったヘビーな問題を取り扱っており、人気子役として活動していた小学生の倉田紗南とクラスメイト・羽山秋人との恋や彼女自身の複雑な生い立ちを、大人目線ではなく子どもならではの視点から描いている。
倉田紗南と親しくなる前の羽山秋人は、家庭の事情もありとても荒れていた。彼らのいた6年3組は羽山のせいで、崩壊寸前まで追い込まれてしまっていたのだ。男子は羽山を崇拝し、同級生ながら「羽山さん」と敬うほどであった。
羽山たちのいじめの対象は、主に自分の悪口を言っていた生徒や担任である。女性だろうと容赦なく、担任の女性教師には男子みんなでインク入りの水鉄砲を当てたり授業妨害をしたりして毎日泣かせていた。
半面、自分に対して正面からぶつかってくる紗南のことは苦手だった。先生いびりを止められたときも、中心となった紗南ではなく後ろから「オニの子っ 鬼ヶ島に帰れっ」と野次を入れたマミちゃんをターゲットにしている。
このときのマミちゃんに対するいじめがなかなか辛い描写だった。男子数人で取り囲み、池に落としたのだ。さらに、上がってこれないようにほうきで頭を押さえつける鬼畜ぶりである。池の藻を飲むほどにパニックになっていたマミちゃんが不憫でならない。
今回紹介した3作品は、いずれもいじめの度合いがひどく読者の心を締め付けた。心をえぐってくるリアリティのある胸糞描写は、少女漫画ならではかもしれない。ただ、これらの漫画はつくし・紗南・歩といった主人公がみな逞しい点が救いである。悪の元凶に立ち向かう強い姿に勇気をもらった読者も多いのではないだろうか。