秋アニメ最注目『葬送のフリーレン』への期待が高まる…「長生きゆえの苦悩」抱えるキャラクターの絶望・悲しみとは?の画像
『葬送のフリーレン』(C)山田鐘人・アベツカサ/小学館/「葬送のフリーレン」製作委員会

 現在『週刊少年サンデー』(小学館)で連載中の、原作・山田鐘人氏、作画・アベツカサ氏による漫画『葬送のフリーレン』が2023年秋にアニメ化される。9月1日には、オープニングテーマにYOASOBIによる「勇者」、エンディングテーマにmiletによる「Anytime Anywhere」が選ばれたことが発表。また第1回は9月29日の『金曜ロードショー』で初回2時間スペシャルとして放送されることが決まっており、『MFゴースト』『アンダーニンジャ』など、この秋からスタートとなる人気漫画原作のアニメの中でも最注目の作品となりそうだ。

 同作は、勇者とそのパーティーによって魔王が倒された“その後”の世界を舞台にした物語。かつて10年間、同じパーティーで冒険をした勇者ヒンメルの死をきっかけに、人を知るための旅路へと向かうエルフの魔法使い・フリーレンと、彼女が新たに出会う人々の旅路が描かれていく。

 フリーレンだけがエルフのため1000年以上生きており、人間とは比べ物にならないほどの長生きのため、人間とは価値観や時間の感じ方が異なっている。それが、旅に出ることでかつての勇者やさまざまな人の思いを知り、あらためて切なさや人の心の暖かさを感じるという作品だ。

 今回は、フリーレンのように、漫画やアニメに登場する「長生き」ゆえにさまざまな苦悩を味わったキャラを紹介したい。

■高橋留美子に手塚治虫、荒木飛呂彦の「死なない」キャラたち

 まずは高橋留美子氏の漫画「人魚シリーズ」。1984年より単発で9タイトルが発表されており、テーマは人魚の肉を食べたことによる「不老不死」だ。

「人魚の肉」を食べたことで不老不死となった主人公・湧太(ゆうた)と真魚(まな)の2人が旅を続けながら、人魚と関わったことで人生を大きく変えられてしまった人間の悲しみや愚かさを知るというストーリー。湧太が抱く“自分だけが老いず、死ねないという孤独”はもちろんながら、不老不死を求めるあまり、人間たちや人魚の愚かな欲望が剥き出しになるシーンも多い。

 そもそも不老不死とは自然の摂理に反するもの。妄執にとりつかれた人々の狂気と苦悩が鮮やかに描かれた、高橋氏の異色の傑作となっている。

 巨匠・手塚治虫氏の『火の鳥』も、不死鳥である火の鳥が与える永遠の命をめぐる物語でもある。いつの時代にも根底にある人間の煩悩が描かれており、中でも『宇宙編』『望郷編』で登場する宇宙飛行士の牧村は異星人を虐殺した罰として、死ねない身体で永遠に若返りと老いを繰り返している。

『宇宙編』はファンの間でも救いようがないとトラウマを抱える人も少なくない、壮大な人間ミステリー。同作の執筆をライフワークにしていた手塚氏の人間という生物に対する思いを感じる。

 変わりどころでは、荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』第2部「戦闘潮流」のラスボス・カーズだろうか。物語の後半で究極生命体になったカーズは、火山の噴火によって宇宙へと投げ出される。

 不老不死の究極生命体となった彼だが、そもそも宇宙空間では活動できる生物は存在しない。何をやっても身動きが取れず、死ぬことすらできない彼は最終的に鉱物と生物の中間の存在となり、作中屈指の有名なセリフ「考えるのをやめた」状態に至り、永遠に宇宙空間をさまようこととなる。敵ながら果てしない絶望を感じたシーンだった。

 長生きゆえに抱える苦悩の筆頭としてあげられるのは、一人きりの果てのない孤独だろう。そして、「人魚シリーズ」のように、知らなくていいなら知りたくもない他者の醜い感情に直面することもありそうだ。

 それでも、長生きだからこそ得られる感情もあるだろう。9月29日よりスタートとなる『葬送のフリーレン』にも注目だ。

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