■西斗月拳のヤサカに圧勝!

 最後に注目したいのは『蒼天の拳』の中でも最大の宿敵といえるヤサカとの戦いだ。ヤサカの使用する西斗月拳は、北斗神拳の根源というべき拳法でもある。北斗神拳の始祖であるシュケンは、点穴を知り尽くした西斗月拳に弟子入りし北斗神拳を完成させた。そして、シュケンは北斗神拳を悪用されないようにと、西斗月拳の拳法家を根絶やしにしたのだ。

 しかし、偶然にも生き残った西斗月拳のヤーマは子孫を残し、その末裔のヤサカは北斗神拳を恨むことになる。拳志郎との戦いは避けては通れぬものとなり、拳志郎が北斗神拳伝承者が真の伝承者になるために必要な「天授の儀」を行った後に対決を挑んだ。「天授の儀」は『北斗の拳』にはない設定である……。

 ヤサカの強さは相当なもので、拳志郎と激闘を繰り広げた劉宗武に快勝し、流飛燕を葬っている。北斗神拳と同じように秘孔を突くことができ、北斗の分派と比べても格が違うのは明らかだ。そんなヤサカなら劉宗武以上の戦いをするのではという期待もあったが、拳志郎はあっさりと勝ってしまう。

 ヤサカに迷いがあったということもあるが、あまりにも力の差がありすぎて、西斗月拳の真髄を見せることもできなかった。それによってヤサカまでも改心して拳志郎の仲間になってしまったので、拳志郎は戦いを通して人を生かすことに長けているのかもしれない。

 ケンシロウと霞拳志郎のどちらが強いのかは、ファンの間でも議論されている。しかし、2007年に発売された『北斗の拳×蒼天の拳 オフィシャルガイドブック』(コアミックス)にはケンシロウについて「北斗史上最強の男」と書かれており、その強さは公式に認められているようだ。個人的にも、無想転生を自在に使えない拳志郎と比べると、やはりケンシロウのほうが強いのではないかと思える。

 それでも拳志郎にはケンシロウにはない魅力が沢山ある。『蒼天の拳』を読んで見比べてみてはいかがだろうか?

  1. 1
  2. 2