■アニメオリジナル技
『北斗の拳』のアニメには、原作では出てこないオリジナル技も多数登場した。もっともインパクトがあったのは、19話でお目見えした南斗人間砲弾だろう。
ガレッキー率いる「ゴールドウルフ軍」が使ったこの技、南斗と言いながら大砲に人間を詰め込んで打ち上げ、落ちながら剣での物理攻撃を仕掛けるというシンプルに言えばただの人間大砲である。
技の考案者であるガレッキーは、他の人よりもスピンが加わっており攻撃力が増す。しかし、打ち上げられた敵はみなケンシロウに上空で打ち落とされてあっさりやられた。
20話に登場した南斗列車砲もまた、笑いを提供してくれたオリジナル技のひとつだ。この技も南斗人間砲弾と同様に、武装列車から砲弾を撃つといういたって普通の物理攻撃であるが、人間大砲に比べると格段にダメージ量が多い。
ただ、一発目の攻撃から二発目装填までに時間がかかるため、モタモタしている間にケンシロウが汽車に乗り込み壊滅していた。この2つの技を見ていると、『北斗の拳』における拳法がどんなものだったかを考えさせられる。
114話から登場したボルツとタイガも、複数のオリジナル技を披露している。彼らは存在自体もアニメオリジナルだ。ボルツは放射線状の闘気を放つ元斗百閃槍光や闘気の槍を作り出す元斗青槍飛拳など「気」を具現化させる力を見せ、タイガは闘気を輪状にして放つ元斗緑光飛弾を使ったが、あえなく撃沈している。
以上、キャラ・シーン・技の3つの要素を振り返ったが、テレビアニメ『北斗の拳』は、モブキャラの断末魔も非常に個性豊かだった。みな、「ひ、ひ、ひらめ~!」(40話)や、「金が……ないよほぉー!」「おお俺もだ~!」(54話)など、最期の言葉がそれでいいの? と思うようなバラエティ豊かな発言を残して昇天している。こうして振り返ると、アニメ版『北斗の拳』には製作者たちの遊び心が随所に垣間見える。
武論尊氏・原哲夫氏の漫画『北斗の拳』は2023年で連載開始から40周年を迎えるが、アニメ『北斗の拳』も来年40周年。原作とアニメの違いに着目し、また第1話から物語を見返すのにもいい機会ではないだろうか。