■『地獄楽』化物の血をすする亜左弔兵衛
賀来ゆうじ氏による『地獄楽』(集英社)は、今春にアニメが放送され大きな話題を呼んだ作品だ。ジャンルはダークファンタジーで、不老不死の仙薬をめぐっての殺し合いが描かれる。
本作では、仙薬探しを課せられた死罪人とその監視役である打ち首執行人が、とある島へ足を踏み入れ「天仙」と呼ばれる仙人たちと戦いを繰り広げる。天仙は人間の領域を超えた存在だからこそ、序盤は逃げるだけで精いっぱい。戦っても殺されるという展開ばかりだ。
島では誰もが絶望的な状況に何度も叩き落とされることになるが、その中で特にしぶとい男がいた。それが亜左弔兵衛である。生に対する執着が誰よりも凄まじい彼は、生き延びるためなら何でもやる……。島にいる「化物」を倒し、その肉を食べようとするところもかなり不気味だ。
そんな生命力の持ち主だから、弔兵衛は天仙の一味に殺されかけても、敵の能力をまるで食らうかのごとく自分のモノにしていく。そうすることで敵わないはずの相手を撃破することもできた。
これほどまでに適応能力が高く、自分は絶対に死なない!と信じていそうなキャラもなかなか珍しい。敵の能力の使用には当然リスクもあるだろうから、この先どうなってしまうのかは気になるところだ。第2期の制作も発表されたことだし、今後の展開も見守っていきたい。
敵の特有な能力を手に入れ使用することにはリスクがつきもの。それは今回紹介したキャラたちもちゃんとわかっているはずだが、なりふり構ってはいられなかったのだろう。そんな彼らの姿に、儚さやきらめきを感じずにはいられない。