印南善一に根津夫婦も… 『哲也ー雀聖と呼ばれた男ー』の一緒に打ちたくない“気持ち悪さ全開の玄人”3選の画像
哲也~雀聖と呼ばれた男~(1) (週刊少年マガジンコミックス)

 麻雀を扱うギャンブル系の漫画は数多くあるが、実在の人物をモデルにしているのは珍しいといえる。筆者も麻雀が大好きなのだが、玄人(バイニン)という言葉を初めて知ったのが、原案:さいふうめいさん、漫画:星野泰視さんの『哲也ー雀聖と呼ばれた男ー』(講談社)だ。この漫画は阿佐田哲也さんの小説『麻雀放浪記』などを参考に描かれており、主人公も同名の阿佐田哲也である。

 さて、本作には一緒に打ちたくない“気持ち悪さ”全開の玄人が登場する。どんな玄人だったのか振り返ってみよう。

■もはやゾンビ? ガン牌されても文句が言えそうにない「印南善一」

 哲也のライバルといえば、やはりガン牌の印南善一ではないだろうか。初登場時から独特の雰囲気を持っていたのだが、第18話で玄人として再会したときにはもはや普通の人ではないほどの目力を発揮していた。

 哲也は新宿の雀荘で知らない人はいない「坊や哲」として名を馳せており、一方の印南はその風貌から死神とも呼ばれていた。

 二人の再会のシーンには、のちに哲也の“オヒキ”(相棒や補佐役などを指す言葉)となるダンチが初登場するので、なにかとターニングポイントとなっている。

 哲也に認めてもらいたいダンチは一人で実力を見せようとするのだが、隣の卓に座っている印南の助言によって完敗。なんと印南は牌が読めるらしい。「ガン牌」という技なのだが、麻雀牌に使われている竹の模様や指紋で牌を覚えていくというからとんでもない玄人だ。

 印南のガン牌は常用している薬物の影響でこれが可能となっているのだが、かねてよりの持病だった結核の悪化もありやつれきった姿に。印南は高利貸しの信に頼み込んで金を工面して薬物を買うのだが……。

 こんなヤツと一緒に麻雀をしても、きっと何ひとつ楽しくもない。……というより、恐怖でしかない。しかも、ガン牌を注意しようにも怖くて文句の一つも言えやしないのが現実だろう。

「牌が‥透けて見えるんだよ‥」と震えながら振り返るシーンは、もはやホラーレベルだったな。

■急激に人格が変貌! ダンチの家庭を潰した「根津夫婦」

 哲也のオヒキとして活躍していたダンチだが、第45話に登場する根津夫婦を前にして豹変する。哲也の指示を無視して独自のやり方で勝負に挑み、見事に敗れてしまったのだ。結果、種切れ(賭け金がなくなる)となって哲也ともどもチンピラたちにボコボコに殴られた挙句、ダンチは哲也に心を閉ざしてしまうのだ。

 実はこの夫婦は、ダンチの両親を食い物にして借金まみれにした仇敵であり、コンビ打ちの玄人だった。最初は人の良さそうな感じでわざと負け続け、挽回するためにレートを上げていき、取返しのつかないところまで追い込む。

 その時の表情といったら、もはや妖怪人間かというくらい卑しい顔になっている。とくに妻のほうは密室で一緒になりたくないと思うくらいの変貌ぶり。

 う〜む、この時代に自分がいたら……と考えると、この夫婦に何もかもむしり取られていたかもしれないな。なんだか感情移入してしまって、本気でダンチを応援したものだった。

  1. 1
  2. 2
  3. 3