■『北斗の拳』牙一族

 原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による『北斗の拳』(集英社)は、今年40周年を迎え未だに熱が冷めることがない。レイの操る南斗水鳥拳をはじめ、サウザーの南斗鳳凰拳やシュウの南斗白鷺拳など、南斗聖拳には鳥をモチーフとした名が付けられているが、同作にはその他にも象形拳を取り入れたキャラが登場する。それが、作品序盤に現れた牙一族。

 牙一族は狼の動きを参考にしていた。そして、集団殺人拳として「華山群狼拳」を完成させ、ケンシロウやレイに挑むことになる。この技は体の小さい男が大きな男の背中に隠れて不意を突いたり、上下一斉に襲い掛かったりするなど、多くの攻め手を持つ。四方八方から予測不能な攻撃を仕掛けることで、相手を翻弄するようだ。

 そんな牙一族に対して、ケンシロウとレイは背中合わせにして構え、全ての攻撃を打ち破る。残ったひとりは、ケンシロウの「北斗千手壊拳」によって残り5秒の命となるが、それを待たずレイにより容赦なく体を切断されるという、あまりにも悲惨な最期を迎えた。

 北斗と南斗による最強タッグを前に、あっさりやられた牙一族だったが、他の雑魚キャラに比べると独自の拳法を操るなど、戦術がしっかりしていたチームだった。

 その他には、シンの配下に「クラブ」という長い爪を武器に戦うキャラがいた。ケンシロウに「弱いカマキリ」と表現されているところからも、彼もひょっとしたら象形拳の使い手だったのかもしれない。

 その他には、狼の噛み跡のように相手の肉を削ぎ落とし、そのあまりの速さに冷気すら感じるというリュウガの「泰山天狼拳」。『ドラゴンボール』初期の頃にヤムチャが使用していた超高速のオリジナル技である「狼牙風風拳」なども漫画で描かれた狼の象形拳だろう。

 象形拳はそれほど目立つ拳法ではないのかもしれない。しかし、真似をする素体によって注目度が増す。これからも、とんでもないものを象形拳に取り入れるキャラが現れるかもしれない。

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