■うまくいったからいいものを…ケンシロウにリンを託したことで死にかけたバット
最後は、青年へと成長したバットだ。ユリアは死の間際、ケンシロウにリンと一緒になってほしいと願っていた。「リンちゃんは一途にケンのことを」と、自分への幸せをリンへ与えて欲しいと思っていたのだ。
このシーンだけを見れば、“なんて健気なんだユリア……ケンシロウも一人きりになってしまうし、リンと結ばれれば万々歳だ!”と思ってしまうのだが、ちょっと待て! だって、リンに一途なバットもいるんだぞ。リンを守るために全身傷だらけになっていた彼の気持ちが、ユリアには見えていなかったのだろうか。そういえば、少年期のバットは小生意気なヤツだったしな……。
しかし、よくよく考えてみたらとんでもない話だ。だって自分が死ぬからって、ほかの女性を押しつけているのだから。それだったら最初から身を引けよと思ってしまう。病で余生も少なく同情の余地はあるものの、普通に考えたらちょっとズルいんじゃないのか?
しかも、ケンシロウがリンとバットに幸せになってほしいと願ったら落雷を浴びせ(ユリアの仕業ともいえる)、記憶を失ったケンシロウのためにバットは死にかけてしまう。全部がうまくいったからいいものを……下手したら全員死んでいたかもしれなかったぞ。
さて、ケンシロウに一途なヒロイン・ユリアだが、その存在は周囲を引っ掻き回す魔性の女ともいえた。ヒロインといえど、なぜか筆者の周りではあまり人気がなかったような……。
そういえばトキもユリアが好きだったな。ラオウがユリアを抱き寄せたシーンで助けに入ったのはトキであり、とてもカッコよかった。
あんなに優しくて強くてイケメンの男性に好意を寄せられていたら、女性はグッとくるのではないだろうか。きっとトキの気持ちにも気付いていただろう……。なんとも罪深き女だった。