『北斗の拳』(原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏)に登場する美しきヒロイン・ユリア。リンもヒロインのような立ち位置といえるが、漫画でヒロインといえば主人公の恋人役なので、やはりケンシロウの唯一の恋人であるユリアが絶対的ヒロインだろう。
さて、このユリア……本人はそんなことを考えてもいないだろうが、実はかなり“魔性の女”でもある。そこで、ユリアによって人生を狂わされた登場人物を見てみよう。
■執着するあまり毒舌で完全拒絶されたシンとラオウ
ユリアは美しい女性なので、当然ながら世紀末の猛者たちに狙われてしまう。代表格が南斗六聖拳のシンと、“拳王”ことラオウの2人だ。コイツらは昔からユリアに気があり、実際にユリアをケンシロウから奪い去ったとんでもない独裁者たちだ。
しかし、ユリアは南斗六星拳に名を連ねるほどの血統で性格も結構キツく、その風貌からはとても想像つかないほどの毒舌キャラでもある。
実際にシンがケンシロウを襲った際、「おれは昔からユリアが好きだった」というシンの告白に対し、ユリアは「な…なにを! わたしは あなたにそう想われていると知っただけで死にたくなります」と言ってのける。
え? 死ぬほど嫌なのか……? しかし、シンも黙ってはいない。「ますます好きになる」と答えるのだ。完全拒絶がたまらないというのだから、もはや変態だろう。しかも、ユリアをさらってからシンは権力を手中に収めるも、ユリアに「むしろ軽蔑する」と言われる始末。
そしてラオウ。子どもたちの前で白昼堂々とユリアを抱き寄せ「ケンシロウを捨てろ!!」「そして今日から このおれを 愛するのだ!!」と、普通の男には言えないことをサラッと言ってのける。
しかしユリアは「なにをバカな!!」「離して!!」と、こちらも完全拒絶。いや当然だろうが、普通なかなか面と向かっては言えないのではないのか?
シンやラオウといった自己中心的なタイプには、ユリアのような気が強い女性がたまらないものらしい。ユリアがキツい性格でなければ、シンやラオウもそこまで執着することもなかったのかもしれないな。
■ラオウと対峙せざるを得ない状況に追い込まれるジュウザとトウ
次は、南斗五車星のジュウザと、リハクの娘であるトウだ。作中でも屈指の人気を誇るジュウザはかつてユリアに恋するも、実は母違いの兄妹のため結ばれない。
原作ではおそらくユリアはその事実を知らないようなのだったが、ジュウザとどれだけ仲良く過ごしてもきっとケンシロウと恋に落ちていたのだろう。いや、絶対にジュウザの好意を知っていたと思う。罪深き女だ……。
ユリアと結ばれないことがわかり、ジュウザは生きる気力もなくなってしまう。だが、「わたしのためにおまえの命がほしい」「わたしの願いをきいてくれぬか」と、ユリアに面と向かって言われては仕方ない。ジュウザは命を懸けてラオウを止めに行ってしまうのだ。
このシーン、ユリアは自分の言葉ならジュウザも動くだろうと考えていたのではないだろうか。何度も言うが……なんて罪深き女なんだ。
そして、もう一人のトウ。こちらはラオウに恋をしている女性だ。自分に振り向いてくれないラオウに対して自らナイフを胸に刺し、その心の中に少しでも自分の存在を置いておきたいと願って自害したのだ。
しかし、ラオウは「バカな女よ…」「想いが届かぬなら なぜ このオレを殺さぬ!」と言い放つ。ええ!? いやいや、ナイフでアンタは殺せないでしょ。というよりも死なないじゃん?
そんなことさえも分からないほど狂ってしまったラオウなのだが、やはりこれもユリアが魔性の女だからトウが死んだとしか思えない。