地球から遠く離れ、宇宙で生活をするようになった人々を描く『ガンダム』シリーズにおいて、大気圏突入の際には何かしら特別なエピソードが発生するのが定番だ。シリーズで最初にモビルスーツの大気圏への突入シーンが描かれたのはテレビアニメ『機動戦士ガンダム』第5話「大気圏突入」にて。シャアの警告を無視して戦闘を継続するクラウンのザクが、大気圏突入の熱で燃え尽きていくシーンは、あまりにも有名である。
そんなガンダム名物の大気圏突入エピソードで、悲劇に見舞われたキャラクターを4人ピックアップしていこう。
■恋人への思いが断末魔に『Zガンダム』カクリコン
まずは『機動戦士Zガンダム』より。第11話「大気圏突入」では、ジャブローを叩くべく行われたジャブロー降下作戦において、大気圏内での戦闘となった。
その際、ティターンズのカクリコン・カクーラー中尉が駆るマラサイは、ガンダムMk-IIを深追いし過ぎて高度を落とし過ぎたため、バルーンパラシュート(バリュート)がオートで開いてしまうこととなる。大気圏突入時の混沌とした戦場とはいえ、敵の目の前でバリュートを開いてしまったら、格好の的である。主人公であるカミーユ・ビダンに、バリュートを切り裂かれてしまうのだった。
結果、裸のモビルスーツで大気圏突入する事態になり、燃え尽きてしまった。『機動戦士Zガンダム』の1話から登場していたカクリコンだが、あえなくここで退場。散り際に叫んだ、地球に残した恋人を思う「アメリア!」という言葉が、カクリコンを象徴する言葉となるのであった。
■冷や汗ダラダラの『Zガンダム』クワトロ
同じく『機動戦士Zガンダム』では、クワトロ・バジーナも大気圏突入の際、悲劇に見舞われている。この大気圏突入は、カクリコンとは別のエピソードとなる第35話「キリマンジャロの嵐」で描かれた、キリマンジャロ攻略作戦の、衛星軌道上でのことだ。
ここでクワトロの百式が、ヤザン・ゲーブルのハンブラビ隊との交戦中にカミーユをかばったことで、ハンブラビの武器「海ヘビ」に接触。コントロール不能となり引力に引かれていってしまう。劇中の描写では、「コン」と軽く当たる程度の衝撃だったが、クワトロ本人も「ええい! 打ちどころが悪いとこんなものか」と言うように、当たりどころが悪かったということだろうか。ちょっとしたきっかけで、大気圏へと落下することとなった。
しかし、カミーユの機転でウェイブライダーを百式の盾とすることで回避。九死に一生を得た。ファースト『ガンダム』のクラウンのこともあり、いよいよ因果が回ってきたかとハラハラした瞬間であった。
クワトロ当人も、海ヘビが軽く接触しただけなのに大気圏突入となり、まさかの事態に酷い焦りようを見せた。顔中から冷や汗を流し「意外と早いものだな」と、そこら中のレバーをガチャガチャといじってみることしかできなかったクワトロは、生きた心地がしなかったであろう。そして、その後のサイコ・ガンダムとの再会も考えると、物語全体としても悲劇的な方向に向かっていくことになる。