■『MAJOR』おとさんが復活を告げる涙の代打サヨナラホームラン
最後は満田拓也さんによる『MAJOR』から、主人公・茂野吾郎の実父である本田茂治を紹介する。
プロ野球選手で投手の本田は妻に先立たれ、無茶な練習から腰などを壊してしまい2軍落ちに。しかも投手の命ともいえる肘を故障し、とうとう解雇の危機に陥ってしまう。
まだ幼い息子の吾郎が球団事務所まで駆け付け、「おとさん(本田茂治)は手術すれば治るんだ、手術して治るまで待ってあげて」と涙ながらに大人たちに懇願する姿には、こちらまで号泣してしまったものだ。
そんな息子のために再起した本田は打者に転向。徐々に結果を残し、とうとう1軍入りを果たす。だが、本田はそのことを吾郎に伝えておらず、吾郎は憧れのおとさんが野球を辞めるものだと勘違いしていた。
そして、本田が1軍復帰となった試合。スタジアムに招待された吾郎は“おとさんがいない試合なんて興味がない”と言いつつも、通っている幼稚園の先生・星野桃子とともに訪れる。
試合は終盤に入り、代打のアナウンスが入って打席にはおとさんが登場。まさか打者として復活するなんて思ってもいない吾郎は驚くのだが、もちろん全力で応援する。
「おとさん打てぇーっ!!」という絶叫が届いたのか、本田の一振りはジャストミートし、打球はライトポールを直撃するサヨナラホームランとなった。
背番号44で左打ちとあって、まさにランディ・バース並の打球だった。このホームランは本当に感動したものだ。復帰することをあえて吾郎に隠していた父親としての気持ちも分かるし、妻の死とたび重なるケガで野球生命の危機に陥ってどん底にいた男が、愛する息子のために復活を遂げるなんて……おとさん、カッコ良すぎる。
その後、デッドボールによる悲劇もあるので序盤にしか登場しない本田なのだが、桃子とのエピソードも含めて、作中ではとてつもない存在感を放っていたものだ。
夏の甲子園が終わり、プロ野球も終盤戦となっている。優勝争いも白熱するが、ここからは個人タイトルも気になるところである。ドラマチックな魅力あるホームランを、どんどん期待したいものだ。