8月23日に行われた第105回全国高等学校野球選手権記念大会決勝戦で、慶応義塾高等学校野球部が仙台育英学園高等学校を8対2で破り全国を制した。
4年ぶりの声出し応援の復活ということもあり、今年の甲子園決勝ではスタンド席からの割れんばかりの応援の様子も試合中から話題になったが、スポーツ漫画の世界でも、選手たちを必死に応援する姿で読者に感動を与えたキャラは少なくない。脇役となってしまうものの、読者の立場に近いものがある彼ら。今回は漫画に登場した「応援団」キャラを何人か振り返りたい。
■「歴史に名を刻め~!」『SLAM DUNK』堀田徳男
まず最初に紹介するのは、井上雄彦氏のバスケ漫画『SLAM DUNK』に登場する堀田徳男だ。湘北高校の3年生で、ヤンキー漫画としての側面もあった序盤で番長的なキャラクターとして主人公・桜木花道の前にあらわれた。
そして堀田は三井寿とともにバスケ部襲撃事件に参加。しかし、三井の心中を察し「三っちゃん本当は…バスケ部に戻りたいんじゃ…」と問いかけ、三井がバスケ部に戻るきっかけを作った。そして三井をかばいバスケ部襲撃の首謀者の汚名をかぶる。見た目はイカついが、アツい男なのだ。
以降は、湘北高校バスケ部の応援団団長的な立場として試合会場に駆けつけ、大声を出しひときわ目立った応援をするようになる。特に三井寿への思いが強く、「炎の男 三っちゃん」と書かれた旗を振って応援。山王戦では、三井の活躍する姿を見て「すげえよ 三っちゃんも…」と男泣きした。
『SLAM DUNK』での水戸洋平たち「桜木軍団」もそうだが、スポーツ漫画では、不良のキャラクターが主人公たちの頑張りに心を打たれ、誰よりも熱い応援をするようになるパターンは珍しくない。森川ジョージ氏のボクシング漫画『はじめの一歩』でも、当初は一歩をいじめていただけの梅沢正彦が、後に一歩を尊敬するようになり、陰で支える応援団長にまでなった。
彼らのシーンは必ずしも多いわけではないが、読者に近い立場ということもあり、かつての仲間の頑張りを陰で支える彼らの姿に感動してしまう人は多いのではないだろうか。
■天性の明るさでみんなを支える『おおきく振りかぶって』浜田良郎
続いては、ひぐちアサ氏の漫画『おおきく振りかぶって』に登場する西浦高校応援団団長・浜田良郎だ。浜田は、主人公・三橋廉と同じ西浦高校に通う1年生だが、「バカ」が原因で高校を留年していると本人が語っている。
その通りにちょっとおバカではあるものの、天性の明るさで野球部を支え、部員の少ない野球部のために自らも練習に加わるほど献身的で、三橋たちを思う良い先輩(?)なのだ。そして少数ながらも応援団を結成。持ち前の行動力を発揮し、夏の予選には200人ほど集めて野球部の勝利に貢献する。
監督の百枝からは応援団の必要性を力説されるシーンがあったり、実は父親がリストラにあい苦労していたりと、野球部員以外でバックグラウンドを深掘りされているキャラでもある。
多くのスポーツ漫画では選手のキャラクターに焦点が当てられるが、応援団の過去や重要性が掘り下げられるのは非常に珍しいケースと言える。他の野球漫画にはない、『おおきく振りかぶって』ならではの面白さが詰まったキャラクターだ。
■女応援団長『キャプテン翼』中沢早苗
最後に紹介するのは『キャプテン翼』中沢早苗だ。『SLAM DUNK』の赤木晴子や『タッチ』の浅倉南のようにスタンドやベンチから応援してくれる女性キャラクターはいるが、早苗のように学ランまで着て応援団として振る舞うキャラは珍しいのではないだろうか。
小学生時代は男勝りで気が強く、同級生から「あねご」と呼ばれていた彼女。南葛小の応援団長だったが、転校してきた大空翼に一目惚れし、「ファイト 翼くん」と書かれた旗を振り、翼専門の応援団となる。
テレビアニメ『キャプテン翼』のエンディング曲「翼よ!走れ」も早苗の「翼くん、今日も燃えてるか~い」というセリフから始まる、翼を見守る内容。その歌通り、作中で読者以上に翼を見続けてきたキャラだが、翼くんへの応援熱が高まりすぎて暴走ぎみなところも。
南葛SCが全国大会に出場した際には、小学生ながらヒッチハイクをして試合会場に駆けつけるというとんでもない行動を見せ、どうしても翼のもとへ行きたかったのか、舎弟二人に「ちょっとあんたたちふたりで車にひかれなさい そうすればとまるから!」と車道に押し出そうとする始末だった。
中学進学以降は応援団という立場から、部活のマネージャーとして翼やチームを支えることになった彼女。団長として、マネージャーとして、そして妻として翼を応援し続けた、『ジャンプ』作品でも珍しい応援団キャラではないだろうか。
夏の甲子園でも、各高校の応援が球場の雰囲気を大きく盛り上げていた。今回紹介したキャラクターたちも、チームやメンバーを支える屋台骨と言っても過言ではないだろう。