2023年4月期に放送された大ヒットアニメ『【推しの子】』。前世で非業の死を遂げた主人公が、記憶を持ったまま推しのアイドルの子どもに生まれ変わるという内容で、転生モノの要素とサスペンスの要素、芸能界をリアルに描いた点が高く評価される作品だ。
原作者は実写映画化もされた『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』の赤坂アカさん、作画は『クズの本懐』の作者である横槍メンゴさんが務めている。
漫画の制作を原作と作画で分ける分業制が定着して久しいが、赤坂さんは上記の通り、元々は1人で原作と作画をしており、その作品も大ヒットしている。
今回は、『【推しの子】』の赤坂さんのように、漫画原作者が実は作画もしていた例を紹介したい。
■幅広いジャンルの作品を発表してきた柴田ヨクサル
まずは、『ブルーストライカー』や『ヒッツ』(いずれも作画:沢 真さん)、『プリマックス』(作画:蒼木雅彦さん)などの原作を務める柴田ヨクサルさん。
柴田さんは1996年より『ヤングアニマル』(白泉社)にて連載されていた格闘漫画『エアマスター』や、2006年から『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載されていた将棋アクション漫画『ハチワンダイバー』の作者である。『エアマスター』は2003年にアニメ化、『ハチワンダイバー』は2008年に溝端淳平さん主演でドラマ化されている。
『ハチワンダイバー』にも格闘要素があり、また連載初期の作品は格闘モノが多かったが、以降はさまざまなジャンルの作品を手がけている。特に『プリマックス』はこれまでの系統とは異なる「萌え」「カワイイ」要素もあり、かなりの路線変更に驚かされた。
■森高夕次名義で漫画原作を手がけるコージィ城倉
続いては、森高夕次というペンネームで漫画原作の活動を行なっているコージィ城倉さん。作画をアダチケイジ(現在は足立金太郎名義)さんが担当した『グラゼニ』は、第37回講談社漫画賞を受賞した話題作だ。なお、スピンオフ作品である『グラゼニ 〜夏之介の青春〜』の作画は太秦洋介さん、『昭和のグラゼニ』の作画は川さんが担当している。
舞台を変えて続く長期連載作である本作は、野球をテーマにした作品にしては珍しく、試合の描写よりも、野球にまつわる「お金」の部分に焦点を当てている。
主人公の凡田夏之介が左の中継ぎ投手という地味なポジションに設定されていることで、野球の世界のシビアさがより強調されており、野球作品としてはかなり新鮮味を感じる作りだ。引退後の年収が100万円台になることを危惧する野球選手が、これまで漫画の中で描かれてきただろうか。
先述の通り、コージィ城倉さんは野球に造詣が深く、自身が原作と作画の両方を務める作品としても、『週刊少年マガジン』(講談社)で2003年から連載されていた全35巻の『おれはキャプテン』がある。また作画担当として、ちばあきおさんによる野球漫画『キャプテン』のスピンオフ『プレイボール2』や、『キャプテン』の最終回からの続きを描いた『キャプテン2』を手がけてきた。
■数々のヒット作の原作を担当してきた稲垣理一郎
さて、目黒蓮さん(Snow Man)主演で2023年7月より放送中のドラマ『トリリオンゲーム』は、漫画が原作の作品だ。原作は稲垣理一郎さん、作画は池上遼一さんで『ビッグコミックスペリオール』(小学館)にて連載されている。
原作者の稲垣さんはこれまで『アイシールド21』や『Dr.STONE』など、数々のヒット作の原作を担当しているが、過去には漫画家として『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で漫画を描いていたことを、2006年に自身の公式サイトで明かしている。
それゆえ原作者でありながら絵もある程度描けるようで、本人や少年ジャンプ漫画賞の公式Ⅹ(旧Twitter)などではクオリティの高い、人物の表情などまでも分かりやすいネームがたびたび公開されている。
元々は作画もしていた漫画家が分業制で原作を担当する利点は、ストーリー作りに集中できたり、これまでの作画のイメージを変えられたりとさまざまあるだろう。
また作画担当者にとっても、ネームがわかりやすいなどのメリットがあるのかもしれない。