『ピースな奴ら』に『この手をはなさない』も…「りぼん黄金期」を縁の下で支えた“懐かしの作品”を振り返るの画像
「特別展 りぼん」公式ビジュアル

 少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)は、最高発行部数255万部を記録した1993年ごろが“黄金期”と呼ばれ、数多くの名作が生み出された。看板作品たちのように知名度は高くなくとも、黄金期を縁の下で支えていた作品もまた、見逃せない名作ばかりだった。

 そこで今回は、黄金期の『りぼん』を支えた“陰の立役者”とも言える懐かしの作品たちを振り返っていこう。

■ハチャメチャなギャグコメディやほのぼのギャグも人気だった

 当時の『りぼん』でドタバタ時代劇コメディとして連載されていたのが、赤座ひではる氏による『ばなな姫お成り!』だ。

 おてんばなお姫様・“ばなな姫”が繰り広げるドタバタ劇が見どころの本作。弾薬庫で火打ち石を使ってお城を吹き飛ばしてしまうようなばなな姫のエネルギーに、読むと元気をもらえたのは筆者だけではないはずだ。今になって「読み返したくなる」とファンが口を揃えるのも納得の、懐かしの作品の1つだ。

 また、ほのぼの系のギャグ漫画と言えば、片桐澪氏の『くまちゃん』を忘れてはならない。突然15歳の少女・桂の家へやってきた可愛らしく不思議な“くまちゃん”。その正体はなんと宇宙人というSFな設定の本作なのだが、登場するキャラクターがそれぞれ愛らしく、ほのぼのとした世界観が読者の心を癒してくれた。

■前向きでパワフル…はたまたちょっと天然の変人系も!? 愛されヒロインが大活躍

 いつの時代も前向きで正義感の強いヒロインは愛されるものだが、黄金期の『りぼん』でもこのセオリーは存在していた。

 大塚由美氏の『ピースな奴ら』もそんな作品の1つ。国体で優勝するほどの剣道の腕前を持つヒロイン・桐生吹雪は、桐生会組長の一人娘。好きな男の子の前では途端に大人しくなってしまう一面を持つ。恋愛はもちろん、アクションあり、コメディありと、テンポの良い展開に夢中になったものだった。

 また、一風変わったヒロインが活躍するのが、あいざわ遥氏の『お砂糖缶づめ』だ。

 普段、ふわふわと掴みどころのないヒロイン・中澤あきらは、メガネをかけると天才的な頭脳を発揮する不思議な女の子。本作は、そんなあきらと“陰の正義の味方”として生徒の悩みを解決していく生徒会の面々の活躍を描いた痛快ストーリーだ。

 “お砂糖”のようにふわふわと可愛いあきらが、メガネをかけた途端にキリッとした表情になるのが面白く、そのギャップにハマった読者も多いことだろう。

■『りぼん』と言えばラブストーリーも外せない!

 やはり『りぼん』と言えば、王道のラブストーリーも外せない。

 カッコいい男の子に囲まれ生活するシチュエーションは“少女漫画あるある”の設定だが、倉橋えりか氏の『乙女ちっく戦争』では、美形すぎる2人の兄とイケメンの彼氏に囲まれて青春を謳歌するヒロイン・青柳千夏が登場する。

 女の子が憧れる要素が詰め込まれた“The・少女漫画”の本作。『りぼん』で名を馳せた倉橋氏初の連載作品とあって、今となっては貴重な一作といえるだろう。

 一方で、ちょっと大人な恋愛に憧れる少女たちに人気だったのが、小花美穂氏の『この手をはなさない』だ。小花氏といえば『こどものおもちゃ』など名作を生んだ人気漫画家だが、小中学生向けの『りぼん』にしては“大人向け”の作品が多いことでも有名だろう。

 本作も恋愛ストーリーをベースに、ヒロインの失踪や、借金、夜逃げ……など、なかなかダークな展開も見られ、子どもながらにドキドキしながら読んだという人も多いだろう。当時の“りぼんっ子”にとって、少し大人な世界を見られる印象的な作品となったようだ。

■人気漫画家による懐かしの作品たちも!

 大成した人気漫画家たちの懐かしの作品も忘れてはならない。『GALS!』で知られる藤井みほな氏の初期作品『パッション・ガールズ』も、りぼん黄金期に連載されていた作品の1つだ。

 モデル業界にスポットライトを当てた本作は、6人の高校生の入り乱れた恋愛模様を楽しめる作品になっている。モデルという“非日常”に身を置く彼らのキラキラとした日常がまぶしく、少し羨ましく思った少女たちは多かっただろう。

 そして、『姫ちゃんのリボン』で知られる水沢めぐみ氏の『おしゃべりな時間割』も、この時期掲載されていた。

 本作は水沢氏が『姫ちゃんのリボン』で大ヒットしたあと、短編ものとして連載された。実体験をもとに描かれた作品だったというが、だからこそリアルを感じることができ、甘酸っぱい初恋のような気持ちになれる名作だった。

 

 りぼん黄金期に連載されていた作品は、今、振り返ってみても名作揃いだ。看板作品たちは軒並みアニメ化するなど、当時の『りぼん』の勢いはすさまじかったと思う。大人になった今だからこそ、当時を懐かしみながら読み返してみてはいかがだろうか。