『機動戦士ガンダム』パイロット能力はアムロが上も…ニュータイプ能力では「カミーユ最強説」が根強いのはなぜ?の画像
『カミーユ・ビダン×ぴあ』(ぴあMOOK)

 ガンダムシリーズ宇宙世紀、人は宇宙へ飛び出し、そして「ニュータイプ」という新しい人類が誕生した。その代表格となるのが、『機動戦士ガンダム』主人公のアムロ・レイであろう。シリーズトップクラスのパイロット能力を持ち、そして、数々の戦果を挙げている。しかし、そのアムロをも凌ぐニュータイプと言われているのが『機動戦士Zガンダム』主人公であるカミーユ・ビダンである。ガンダムファンの間では今でも「カミーユ最強説」が根強くあるほどだ。

 そこで今回は、ガンダムシリーズにおけるニュータイプとは何かを押さえたうえで、「カミーユニュータイプ能力最強説」となる所以を考察してみた。

■そもそも「ニュータイプ」とは?

 宇宙世紀における「ニュータイプ」とは、人類が宇宙へ進出したのち、宇宙に適応した新人類のことを指す。時代や作品ごとに異なる解釈や描写がされているが、共通するのは、作中で「オールドタイプ」と呼ばれる私たち地球で暮らす人類にはない秀でた能力を持っていることだろう。

 たとえば、人並外れた直感力や洞察力、空間認識能力、さらには離れた場所でも意思疎通ができるテレパシー能力などがあり、それらを複合的に持っている。

 ここで押さえておきたいのは、ニュータイプはその特性により、モビルスーツ戦にて優位であるけれど、戦いだけに限った能力ではないということだ。つまり「ニュータイプ能力」と「パイロット能力」はイコールではないということ。

 ゆえに、アムロやシャア・アズナブルはパイロットとしてトップクラスに優秀だけれども、いずれも「最高のニュータイプ」とはなっていない。

■公式がカミーユを「最高のニュータイプ」だと認定している

 ガンダムシリーズには、アムロやシャアのほかにも、ララァ・スン、ハマーン・カーン、パプテマス・シロッコ、ジュドー・アーシタ、その後の作品のバナージ・リンクスやシーブック・アノーなど「ニュータイプ最強候補」は多い。

 作品や能力の種類、さらには搭乗しているモビルスーツ・モビルアーマーなども違い、単純な比較はできないところがファンとしてはもどかしいところだ。しかし実は、公式が認定している「最強のニュータイプ」がいる。それがカミーユ・ビダンなのだ。

 原作者である富野由悠季氏は、『ガンダムの常識 ガンダムなんでもランキング モビルスーツ篇』(双葉社)のなかで「最高のニュータイプ能力はカミーユである」ということを明言している。さらには、公式ガンダム情報ポータルサイト『GUNDAM.INFO』でも、カミーユを「最高のニュータイプ」と評している。

■カミーユのニュータイプ能力その1「驚異の感受性」

 このように公式認定されている「最高のニュータイプ・カミーユ」であるが、では実際、作中ではニュータイプとしてどんな能力を発揮しているのだろう 。

 カミーユは『機動戦士Zガンダム』の主人公で、可変型モビルスーツ「Zガンダム」に乗るニュータイプパイロットとして多くの戦果をあげている。そのなかでも、やはり最終50話「宇宙(そら)を駆ける」での、シロッコ戦が特徴的だろう。

 シロッコは、同じくニュータイプであり、事態を予見する洞察力に特出した才能を持っている。さらに、シロッコは自身の能力の最大限に発揮できる専用機「ジ・O」を設計開発。グリプス戦役終盤にこれを投入し、ニュータイプパイロットとして凄まじい力を見せていた。

 しかし、最終決戦でカミーユはそのシロッコさえも凌駕した。ニュータイプのなかでもカミーユは感受性において群を抜いており、死んでいった者たちの思念をも取り込むことができる。そして、それを自分自身や搭乗するモビルスーツの力にすることができたのだ。

 さらには、そのカミーユと相対したシロッコのモビルスーツ「ジ・O」が動かなくなっていたところを見ると、その力は他者のモビルスーツにも干渉できるようである。

 このように、カミーユはシロッコ戦でニュータイプとして限りなく全能に近づいていた。しかし、その能力が強力過ぎるがゆえに、皮肉にも倒して死にゆくシロッコの思念をも取り込むことになり、最終的には精神が保てなくなってしまう。

■カミーユのニュータイプ能力その2「強力な思念体」

 続編の『機動戦士ガンダムZZ』でも、カミーユは登場するが精神崩壊のまま、残念ながらパイロットとして復活することはなかった。しかし、カミーユのニュータイプとしての能力は、ここからが本領発揮といっていい。

『機動戦士ガンダムZZ』の主人公であるジュドーをニュータイプとして覚醒に導いたり、戦場ではジュドーたちに思念を送り的確な指示を出したりと、要所要所で重要な役割を果たしている。

 極めつきは、最終話の第47話「戦士、再び……」第一次ネオ・ジオン抗争での最終決戦、絶体絶命だったジュドーのもとに思念体として駆けつけ、過去に死んでいったアーガマのクルーやフォウ・ムラサメ、ララァの思念体とともに、ハマーンの「キュベレイ」を弾き返し、ジュドーの窮地を救った。これにより、第一次ネオ・ジオン抗争においてもエゥーゴ勝利に貢献している。

『機動戦士ガンダムZZ』のカミーユはサポート的なポジションであったが、ニュータイプとしての能力を使い決定的な仕事をしていた。

 

 今回は「カミーユニュータイプ能力最強説」となる所以を考察してきた。カミーユのニュータイプとしての能力は公式が最高と認めるほど強力で、しかし、強力がゆえに戦いの末、精神崩壊してしまうという悲しいものだった。

 くしくも、その後カミーユが導いたジュドーが言っていた「持てる能力を調和と協調に使っていれば、地球だって救えたのに!」——これは最終決戦でハマーンへ放った言葉だが、この言葉を「最高のニュータイプ」だったカミーユに当てはめれば、人類を導くさらに特別な存在となっていたかもしれない。

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