現代のゲームでは当然ともいえるスポーツゲームの実況だが、ファミコン世代の筆者からすれば夢のようなシステムだった。とくにコナミ(現:コナミデジタルエンタテインメント)の実況シリーズは、発売当初から度肝を抜かれたことを覚えている。そこでコナミが誇る実況シリーズを振り返ってみよう。
■『ウイイレ』よりも先に注目を浴びた!? スーファミ『実況ワールドサッカー PERFECT ELEVEN』
まずは、1994年11月にスーパーファミコンで発売された『実況ワールドサッカー PERFECT ELEVEN』だ。このゲームは同年に開催された「FIFA ワールドカップ アメリカ大会」がモデルとなっている。
アメリカ大会といえば、前年に起きた「ドーハの悲劇」が忘れられない……。このゲームでは「アジアリーグ」のモードがあるので、日本代表を率いてアジア王者を目指したものだ。
さて、試合中の実況は「マーキー」が担当するのだが、それがなんとも新鮮だった。ちょっと慣れてくると同じような実況だと分かるものの、それでも当時としては斬新で、よりリアリティのあるゲーム展開を楽しめたものだ。
また、選手名が下に出てくるのも良かった。架空の名前なのだが、エディットで変更も可能(音声は出ない)だった。とはいえ、サッカー好きならモデルとなった有名選手はさすがに分かるもの。
たとえば、イタリア代表の“ジョバンニ”という選手はポニーテールなので、ロベルト・バッジョではないか?と予想できたのだが、もうそれだけでテンションは爆上がりだ。
また、ゲームモードの「インターナショナルカップ」は、予選リーグと決勝トーナメントに分かれており、ワールドカップ本大会のような興奮が味わえた。
そして、シナリオモードも楽しい。難易度に違いはあるのだが、ワールドカップの激戦を再現してくれている。しかも残り時間が少ないなかでの逆転を目指すので、ハラハラドキドキしたものだった。
ちなみに大ヒットとなった『ウイイレ』こと『ウイニングイレブンシリーズ』よりも先に注目されたサッカーゲームだったように思う。
■ミートカーソルの打撃がリアルに進化! サクセスモードに矢部と猪狩が初登場した名作『実況パワフルプロ野球4』
1997年3月にNINTENDO64で発売されたのが『実況パワフルプロ野球4』だ。『パワプロ』自体はスーパーファミコンで発売されていたが、今作は非常によくできた名作で、筆者は64のなかでも一番遊んだゲームだった。
実況のバリエーションが増えたのはもちろんのこと、ミートカーソルが長方形から楕円形となったため、リアリティなバッティングが堪能できる。
そして、サクセスモードもボリューム満点だった。2軍から3年以内に1軍入りを目指していくのだが、シリーズお馴染みとなる「矢部明雄」と「猪狩守」が初登場している。
野手だけでなく投手の育成も可能で、オリジナル選手を何人も作成していったものだ。気のせいか、ダイジョーブ博士もそれほど難易度は高くなかったような気がする……? 現在のパワプロほど思い通りにいかないとはいえ、自分で選手を育成していける喜び自体、当時は斬新だった。
スーファミ版も面白かったのだが、やはり64のコントローラーで遊べるのがなによりハマる要因といえたものだ。投打だけでなく、守備でも3Dスティックで自由に野手を動かすことが可能なので、回り込んでボールを捕球することも容易にできたものだった。
■やっぱり辻アナの実況が最高! レスラー育成も可能だったスーファミ『実況パワープロレスリング’96 マックスボルテージ』
1996年9月にスーパーファミコンで発売されたのが、『実況パワープロレスリング’96 マックスボルテージ』だ。
当時はすでにプレイステーションやセガサターンなどの次世代機が発売されていたため、スーファミでプロレスゲームをすることには、あまり斬新さがなかったかもしれない。
しかし、筆者のようにプロレス好きでありながら次世代機に手が出せない若い社会人にとって、スーファミはまだまだ現役で活躍していたのでありがたかったものだ。
実況は辻義就(現:辻よしなり)アナが担当しており、プロレス中継さながらの熱さが味わえた。このゲームはプロレスラーの対戦ゲームというより、レスラーを育成することがメインといえる。プロテストに合格して地道に実力を付けていき、乱立する団体ベルトを統一することが目的だ。レスラーの育成ゲームはあまりなかったので、どんどん自分好みに仕上げていけるのが楽しかった。
ただ、発売時期だけが惜しまれる……。スーファミ全盛期に発売してくれていたら、もっと多くのプロレスファンが手にしていただろうし、もっとやり込めたかもしれない。
コナミの実況シリーズは本当に斬新で面白かった。スポーツ中継をリアルに感じられるようになり、臨場感を味わえて熱くなれた。本当に発売当初は度肝を抜かれたものだ。