『有閑倶楽部』に『デザイナー』など名作ばかり! 『りぼん』で少女漫画界を牽引してきた“一条ゆかり作品”を振り返るの画像
一条ゆかり『有閑倶楽部』を旅する(別冊太陽 太陽の地図帖)(平凡社)

 一条ゆかりさんといえば、少女漫画雑誌『りぼん』(集英社)で活躍した漫画家だ。1967年、第1回りぼん新人漫画賞で準入選し、その後デビュー。70年から90年にかけてヒット作を連発し、『りぼん』だけではなく、当時の少女漫画界を牽引してきた。

 女性のプライドや強さを豪快に表現し、飛び抜けて美しい作画も魅力だった一条作品。今回は、少女漫画にあらゆる衝撃を与えた彼女の代表作を振り返ってみたい。

■これぞ一条作品の真骨頂『有閑倶楽部』

 一条さんの代表作品として、まず思い浮かぶのが『有閑倶楽部』だろう。

 名門学校である聖プレジデント学園に通う6人の生徒会メンバーは、日本では名の知れた財閥の跡継ぎ、大病院の御曹司、警視総監の息子……など、まさにセレブばかり。大財閥の男勝りな令嬢・剣菱悠理を中心としたメンバーが、誘拐事件などさまざまな難事件を解決していくストーリーだ。

 1981年に『りぼん』で連載がスタートした本作は、まさに少女漫画黄金期の中心にあった。当時は池野恋さんによる『ときめきトゥナイト』や、柊あおいさんの『星の瞳のシルエット』など王道の恋愛物語が多かったが、本作は恋愛だけではなく、アクションやコメディも楽しめる漫画だった。

 また、印象的だったのが『有閑倶楽部』はホラー展開のストーリーも多く、ゾクゾクした刺激を読者に与えてくれたことだろう。恋愛ストーリーが定番だった時代に激しいアクションやスリラー、政治や国際問題なども取り入れた異彩を放つ作品だった。

■美しいキャラクターやファッションはここから始まった『こいきな奴ら』

『こいきな奴ら』は、1974年から『りぼん』で掲載された一条さんの初期の作品である。(続編『こいきな奴ら PART2』は、1986年から『週刊マーガレット』(集英社)で連載)

 貴族で双子のジュデェスとジュディスは、両親を自動車事故で亡くしていた。事故の真相を探っていた2人は、元殺し屋・パイと、手癖の悪いコソ泥・クリームと知り合い、次々に起こる事件を解決していく。

『こいきな奴ら』は、有閑倶楽部の原点とも言える。ジュデェス、ジュディスは容姿端麗の大金持ちであり、パイは狙った獲物は外さない射撃の腕前を持っている。そんな彼らが日常ではなかなか遭遇しないような大事件に巻き込まれていくのだが、その後はスカッとした展開で読者を楽しませてくれる。

 本作が掲載された70年代は、ファッション、音楽、カルチャーが一世を風靡した特別な時代であり、『こいきな奴ら』にもそれらを彷彿とさせるファッションやセリフが多い。今読み返してみると、およそ50年前にタイムスリップしたようなノスタルジックな気分にさせてもらえる。

■大人になった『りぼん』世代が楽しめる『正しい恋愛のススメ』

『正しい恋愛のススメ』は『コーラス』(集英社)で1995年より掲載された、大人女性向けの漫画だ。2005年9月からTBS系列「愛の劇場」枠で、テレビドラマ化もされている。

 主人公の竹田博明は可愛い彼女のいるイケメン男子高校生。平凡な日常を送っていたが、秀才の同級生・護国寺洸との出会いをきっかけに、大人女性を相手にする出張ホストとして活躍していくことに……。

 何気ない日常に刺激的なスパイスを入れてくれるのが一条作品の特徴でもあるが、本作でも、竹田が本気になった相手の女性は実は彼女の母親だったという驚きの展開も待っている。

 出張ホストで活躍するとあって、ベッドシーンも多い作品は、かつて『有閑倶楽部』に夢中になった少女たちが、大人になっても楽しめるような内容になっている。

■女のプライドと運命がドラマティックに展開された『デザイナー』

 最後に、一条さんを有名にした『デザイナー』を紹介したい。1974年にりぼんに掲載された作品だ。

 主人公の亜美は人気モデルの美しい少女だが、実の親を知らずに育った。ある日、自分の本当の母親を知った亜美は、悪女である母への復讐を誓い、デザイナーに転身して頂点を目指すというストーリーだ。

『デザイナー』は全2巻でありながら、話が非常に凝縮されている。“出生の秘密”、“許されない愛”、“美しい男と女”と、数々の要素が詰まっており、まさに「昼ドラ」を彷彿とさせる内容だ。実際、2005年にTBS系列「ドラマ30」枠では、ドラマ化を果たしている。

 本作は一条さんの作品に多く見られる、女のプライドと運命がドラマティックに展開されているのも見どころだ。不穏な空気をはらんだ作品でもあるが、ファッション業界を舞台に全体的に華やかな作品に仕上がっている。

 

 一条さんの作品は、絵のクオリティが高いことでも有名だ。またデジタル化が進んでいなかった70年代の作品でも、きちんと描きこまれた建物や構図全体の美しさは見事である。

 また、たくさんあるセリフでも吹き出しは小さく、細かな描写が丁寧にされていることから、作者の作画への強いこだわりがうかがえる。一度読むと抜け出せなくなる一条作品、ぜひ今一度チェックしてみてはいかがだろうか。

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