無骨なデザインのものから超巨大なもの、奇抜な色や顔をしたものまで、個性豊かなデザインの機体が登場する『ガンダム』シリーズ。戦争を背景にした作品のため、敵軍に勝つためのさまざまな機体が随時開発されており、中には変形機能を有する可変機を投入し、作中キャラだけでなく視聴者をも驚かせることがたびたびある。
歴代のシリーズに登場する変形機構がかっこいいモビルスーツといえば、王道はなんといっても「Zガンダム」だ。背中のウイングパーツやバインダーのスライドは、現在でもあまり見ないユニークな機構である。今回はそんな「Zガンダム」を筆頭とした、変形機構のかっこいいモビルスーツを見ていこう。
■空飛ぶハンバーガーが空飛ぶドムに「アッシマー」
まずは『ガンダム』シリーズの中でも可変機の活躍がメインだった『機動戦士Zガンダム』に登場する機体は外せない。「メッサーラ」や「バウンド・ドック」など、どのモビルスーツ・モビルスーツも捨てがたいが、今回は代表として量産型可変モビルアーマー「アッシマー」を振り返りたい。
ずんぐりむっくりの巨体といった見た目をしたモビルスーツ形態から、ハンバーガーのような円盤型のモビルアーマーに変形する「アッシマー」。『機動戦士Zガンダム』に登場する機体の中でも、ひと際ユニークなデザインをしている。
肩アーマーなどの上半身が、くるりと回転し、円盤状に綺麗にまとまる変形機構はシンプルながらユニークで芸術性を感じる。逆に、円盤状の機体から、一瞬で空飛ぶドムのような巨大モビルスーツになるのも衝撃的。シリーズでも特に個性的な可変モビルアーマーだ。
■スマートで悪役感のある「ガンダムハルート」
宇宙世紀シリーズだけでなく、アナザーガンダムシリーズからも1機見ていきたい。アナザーガンダムで変形機構が格好良い機体といえば、まず思い浮かぶのが『機動戦士ガンダム00』の「ガンダムキュリオス」系統のモビルスーツだろうか。今回はさらにその中から、アレルヤ・ハプティズムの最終搭乗機体「ガンダムハルート」を振り返りたい。
「ガンダムハルート」の変形で特徴的なのは「GNシザービット」だ。ガンダムの味方機でハサミを装備しているのは珍しい。鋭角的でつり目の顔も相まって、かなり悪役的な造形をしていて格好良い。
変形機構も、ガンダムの本体にはそれほど変化が無いものの、「GNシザービット」を含めた各武装がダイナミックに変形。超スピードで、戦闘機らしさのある横長の飛行形態となる。上からの見た目がいかにも早そうな、黒を基調とした戦闘機になる点も格好良いものである。
「ガンダムキュリオス」で不評だった、下から見るとがに股の本体が丸見えになってしまう問題も改善された。変形前の面影はあるものの違和感なく溶け込んでいる。もともとのモビルスーツ感が薄い「最終決戦仕様」は、さらに統一感があるデザインとなっている。
六つ目になり黒い部分が増し、より禍々しく悪役感が盛られた「最終決戦仕様」も必見である。
■戦車から上半身が生える「ヒルドルブ」
宇宙世紀シリーズ、アナザーガンダムシリーズときたら、宇宙世紀外伝シリーズも外せない。中でも一年戦争時代を軸としたフル3DCGアニメ『機動戦士ガンダム MS IGLOO』より「ヒルドルブ」を見ていこう。
ヒルドルブはジオン公国軍が開発した試作モビルタンク。一度は不採用という評価が下されたものの、試験という名目で使い捨てに近い形で実戦投入された機体だ。
シリーズに登場する多くの可変機は、人型のモビルスーツ形態から飛行機型の飛行形態へと変形するが、「ヒルドルブ」は戦車から“モビル形態”と呼ばれる半モビルスーツ型へと変形する。変形前はまさに戦車という見た目で、ミリタリー色の強いデザートカラーに塗られている。
「巨大な自走砲」「ガタイに似合わずすばしっこい」と相手陣営のパイロットが恐れる性能を持つが、変形時には「エイリアン」のような頭部をした上半身があらわれ、腕部も稼働する。戦車かと思いきや「ヌッ」と現れる不気味な感じがたまらない変形機構だ。
変形後は砲塔が旋回し、手にはマシンガンも持っているので、取り回しや火力が上がっている。反面、重心が高く、砲撃の反動で車体が大きく傾いてしまうようになるデメリットが発生するが、この点について作中ではピンチを打破するための片輪走行に使われていたりと、メリット、デメリットの描かれ方が面白い機体だ。
変形というよりはモードチェンジに近く、他の可変機のような大きなフォルムチェンジは無いものの、キャタピラ装甲の巨大モビルスーツといった姿はかなりの威圧感がある。機体は大破しパイロットも戦死をするが、「一年戦争時に実は存在していた変形モビルスーツ」という後付け設定を、違和感なく描くファン必見のエピソードだ。
宇宙世紀シリーズ、アナザーガンダムシリーズ、宇宙世紀一年戦争外伝シリーズより1機体ずつチョイスして見てきた、変形機構が格好良すぎたモビルスーツ。劇中の時代も放送年代もバラバラだが、どれも可変モビルスーツとしての良さが溢れていた。