1963年に創刊され、今年で60周年をむかえた少女漫画雑誌『マーガレット』(集英社)。『別冊マーガレット』とともに、“少し大人になった少女”向けとして、『りぼん』や『なかよし』から移行していくファンも多く、令和の今も少女から大人まで幅広い世代に愛されている。そこで今回は、『マーガレット』で1970年代に連載されていた名作たちを振り返っていこうと思う。
■少女漫画ブームはここからはじまった!?『アタックNo.1』:浦野千賀子さん
1968年から1970年まで連載されていた浦野千賀子さんの『アタックNo.1』は、従来の少女漫画から一線を画す作品だった。少女漫画でありながら、“スポ根”要素も取り入れ、当時バレーボールブームを巻き起こすほどの人気を誇った名作だ。
ストーリーは、富士見学園のバレー部キャプテンとなった主人公・鮎原こずえが、コーチの本郷俊介やチームメイトたちと世界一の座を目指していく……というもので、手に汗握る展開が話題を呼んだ。
テレビアニメ化も果たしており、70万枚を売り上げた主題歌の冒頭のフレーズを今でも口ずさめる人は多いだろう。なお、曲中のセリフ部分は『アタックNo.1』の象徴的なシーンとして、2000年代に入ってからもテレビCMなどで使用されるほど有名だ。
また、一見厳しいだけのように見える本郷コーチの愛情深く選手たちを思う様子も話題となり、“スパルタコーチ”というだけではない彼に夢中になる少女も多かった。
間違いなく少女漫画界の新たな道を切り拓いた1作だといえる『アタックNo.1』。『マーガレット』を支えた名作のひとつだ。
■美しすぎるキャラクターにドキドキした!『ベルサイユのばら』:池田理代子さん
1972年から1973年にかけて連載された、池田理代子さんの『ベルサイユのばら』は、フランスの王妃となったマリー・アントワネットと男装の麗人・オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェを中心人物に、史実になぞらえて描かれた作品である。
当時、少女漫画雑誌における“歴史物”の連載は珍しかったというが、作者の池田さんの熱意によって実現。「フランス革命」前後の激動の時代に翻弄されながらも、愛に生きた美しいキャラクターたちが生き生きと描かれている。
そして本作の人気にさらに火をつけたのは、宝塚歌劇団による舞台化だったとも言われている。漫画から飛び出してきたかのようなクオリティーで再現された舞台は、当劇団の最大のヒット作と言われ、近年に至るまで繰り返し再演されるほど人気を博している。
連載終了から50年近くが経過している今でも、『ベルサイユのばら』に恋焦がれたファンの熱は冷めることなく、少女漫画界のレジェンド的作品の一つと言えるだろう。
■諦めない姿に勇気をもらった! 『エースをねらえ!』:山本鈴美香さん
1973年から1975年に第1部が、1978年から1980年にかけて第2部が連載された山本鈴美香さんの『エースをねらえ!』もまた、当時の『マーガレット』を象徴する作品の1つだ。
本作は主人公・岡ひろみがコーチの宗方仁とともに一流のテニスプレイヤーへと成長していく姿を描いたもので、“お蝶夫人”こと竜崎麗香のような名物キャラクターも生まれている。
宗方を夢中にさせるひろみに対する凄惨ないじめや、スパルタとも言えるしごきの描写など少女漫画とは思えないシリアスな展開もあるが、やがて世界へと羽ばたいていくひろみのまっすぐな性格と、決して折れない心の強さに勇気をもらえた人は多いだろう。
“スポ根”漫画のヒットは当該のスポーツをブームに導く力を持っていると言われるが、『エースをねらえ!』によって当時の少年少女たちがテニスラケットを握ったのは間違いなく「テニス界の名作漫画」として時代を牽引した名作だ。
1970年代の『マーガレット』作品を振り返ると、往年の名作が揃っているように思う。まさしくこの時代の『マーガレット』作品は、少女漫画ブームに火をつけたといえるだろう。
スポーツや歴史といった、恋愛だけではない要素が詰め込まれたこれらの作品たち。こうして振り返ってみると、その内容の濃さに脱帽するばかりだ。語り継がれる名作として、これからも多くのファンを魅了し続けるのだろう。