■手の平の中で石炭をダイヤモンド化

 板垣恵介氏による『範馬刃牙』(秋田書店)には冒頭でも紹介したように、握力の化け物でもある花山薫がいる。しかしそんな花山の握力を上回るキャラが、「地上最強の生物」の異名を持つ範馬勇次郎である。あの花山を子ども扱いし、作中最大ともいえる筋肉量を誇るオリバと手四つをしても負けない。どんな握力か気になるところだったが、その握力のすごさがアメリカ大統領の前で明かされる。

 学生時代から勇次郎に憧れていたというオズマ大統領は、毎期にわたって行われているアメリカと範馬間での「友好条約」を結び、興奮のままにあるお願いをする。それは炭素に10万気圧の圧力を加えることでダイヤモンドに変化する化学変化を、“核より強力”だという勇次郎の握力によって可能かどうか確かめたいというもの。

 勇次郎は顔色をひとつも変えずに目の前に置かれた石炭をつかむと、それを一握り。そして拳を握ったまま中指でガラス製のテーブルを「まるでダイヤモンドでカットするように」きれいに斬ってしまう。

 さすがは範馬勇次郎と思えるエピソードだが、バキシリーズ第5部『バキ道』には実際に石炭をダイヤにして見せたキャラが登場する。

 それが古代相撲を受け継ぐ青年・二代目野見宿禰。彼は石炭を一握りし、そのすさまじい握力によって、拳で握った部分だけ石炭をダイヤモンドに変化させてしまう。これは2000年前に存在したという初代野見宿禰が行ったもので、先祖代々が挑戦し続けた偉業。これにより彼は正式に“宿禰”を引き継ぎ、そのすさまじい握力によって相手の身体を廻しのように掴み、投げ飛ばすのだ。拳ひとつで石炭をダイヤに変えるなどというのはもちろんあり得ない漫画的表現だが、二代目野見宿禰の強さを演出するかなり興奮するエピソードだった。

 バトル漫画に登場する握力自慢のキャラは、そこに焦点が集まるだけにインパクトが強い。しかし、握力が強さに直結する訳ではないから驕りは禁物である。その力をどう活かすかはキャラ次第だろう。

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