バトル漫画にはそれぞれ得意な分野での強さなどがある。大きく分けると力か技術かになるが、細分化するとかなり多い。筋力だけで見ても、部位によっての違いがある。腕、足、首から始まり、手のひらや肘、指先と加わる力によって攻撃力も激変するのだ。
その中でも握力に特化したキャラがいて、たとえば板垣恵介氏による漫画『グラップラー刃牙』に登場する花山薫は、すさまじい握力を誇るキャラで、重ねたトランプを指で引きちぎっていた。またウイスキーの瓶をひきちぎり、タイヤを引きちぎり……などなど、とんでもないパワーの持ち主であることが強調されていた。
こうしたシーンは、キャラクターの恐ろしさを読者に伝える演出のひとつだが、これまでバトル漫画では花山に並ぶ力自慢も少なからず登場してきた。今回は「握力」に焦点を当てて何人か紹介していきたい。
■最新鋭の科学力を搭載したシュトロハイムの握力
荒木飛呂彦氏による『ジョジョの奇妙な冒険』(集英社)には、人間でありながら吸血鬼に匹敵する力を出せるキャラがいる。それが第2部に登場した軍人、ルドル・フォン・シュトロハイム。
彼は爆発に巻き込まれ死んだのかと思いきや、全身を機械化して再登場する。最新鋭の科学力が反映された彼の“指の力”は「1950kg/cm2」。これがどの程度のものかは正確には分からないところだが、そのときのコマには「サンタナのパワーの約2倍」とも補足されており、とんでもないすごさだということは伝わる。実際にカーズの肉をつまんで簡単にちぎり取ってしまい、シュトロハイムは「肉片にまで細切れにできる」という宣言までしている。
そんな人間を超えた力を手に入れたシュトロハイムではあったが、やはりカーズは顔色一つ変えず。吸血鬼以上の力を持つカーズからすればそれほどの力は驚異に値しないのだろう。
なお、後に究極生命体となったカーズの能力が記載されており、握力は「900kg/cm2」と約半分。この数値もかなり凄そうだが、「視力 天体望遠鏡並」や「知能 IQ400」「睡眠 必要なし」などと比べると、シュトロハイムの数値を知ってしまっている読者的にはそれほど驚かないところかもしれない。いろんな意味で、シュトロハイムとカーズの因縁は深い。
■素手での“仕事”にこだわるジョネス
冨樫義博氏による『HUNTER×HUNTER』(集英社)にも握力自慢の男・ジョネスがいる。すっかり忘れてしまったという読者も多いかもしれないが、彼はハンター試験会場でキルアに瞬殺されてしまったキャラだ。
あっという間に退場したザコキャラではあるものの、それでもジョネスの肩書は凄い。彼は11歳の少年から老人まで、これまで146人以上の命を奪い懲役968年に処せられた超長期刑囚。しかも素手で肉体をバラバラにして殺すことにこだわっている。そして試合開始前には、コンクリートを手でちぎり取って粉々にして見せていた。そこからも握力の強さが十分に伝わってくる。
凄まじい握力や顔つきにより、禍々しい雰囲気をぷんぷん漂わせていたが、戦いが始まるやいなやジョネスは一瞬で心臓をえぐり取られて敗北。キルアに触れることすらできなかった。相手に触れられなければ全く意味がないが、その握力がいかほどのものなのか、気になるところではある。