■『キツネの恩返し』:東京都中野区
東京都中野区を舞台にした『キツネの恩返し』は1978年に放送された。
このエピソードは、あるお坊さんと野生のキツネの出会いを描いたものだ。修行中のお坊さんは、当時は人気(ひとけ)がなかったという中野の土地に住みながら寂しさを感じていた。
そんなある日、野生のキツネと出会う。お坊さんはキツネに縁を感じて食べ物を分けてあげるようになるのだが、キツネもまたお坊さんに懐き、そばで時を過ごすようになっていった。
2人の絆は日に日に強くなる。お坊さんの帰りが遅い日には、キツネは囲炉裏の火をたいて帰りを待っていたり、それだけにとどまらず、初雪が降った日、キツネの身を案じて遅くまで起きていたお坊さんのもとへやってきたキツネは、米と小豆の入った袋を差し出し、“粥を作ってくれ”と話したりもする。
キツネの願いを聞いたお坊さんは、キツネと一緒に小豆粥を食べ、同じ布団で寝ることに。よくしてくれるお坊さんに恩返しがしたいというキツネに、「火事にあわないこと」「水が夏に冷たく冬に暖かければいい」と伝えたお坊さん。それ以降、中野の水は夏に冷たく、冬に暖かいようになり、火事になることも少なくなったのだとか。
優しいお坊さんとキツネの交流を描いたこのエピソード。『まんが日本昔ばなし』の魅力がたっぷり詰まった、あたたかい気持ちになる1話だった。
今回は「東京23区」を舞台にしたエピソードをご紹介してきたが、東京だけではなく日本各地のエピソードを楽しむことができる『まんが日本昔ばなし』。この機会に、自分の住む地域のエピソードを見返してみたいと思った次第だ。