■悠然と歩くメルエム
最後に紹介するのは、やはりメルエムの「強」表現にしたい。暗黒大陸からきたキメラ=アント、そしてその王であるメルエム。これまで数々の強者が登場した『HUNTER×HUNTER』だが、現段階でも最強のキャラではないだろうか?
それぞれの種の生き残りをかけたネテロとのラストバトルはまさに至極で、メルエムの強さを体現するものだった。しかし今回はそれよりちょっと時をさかのぼって、宮殿で彼らが初めて遭遇した場面をピックアップしてみる。
「龍星群(ドラゴンダイヴ)」を使った空からの強襲、そして護衛軍の分断に成功し、25巻No. 268『王。』でついにメルエムのいる宮殿に侵入したネテロとゼノ。このときコムギの存在など予期せぬ事態があったため、メルエムは戦いの場所を移すことを提案した。そして直後、2人の間を悠然と通過してみせる。あまりに容易く自分たちの「死線」を横切ったメルエムに、ネテロもゼノも思わず死を覚悟していた。
ただ2人の間を何気なく通り過ぎるだけというシンプルな行動だったが、作中最強クラスのハンター協会会長ネテロとゼノ=ゾルディック相手に、同じ芸当ができる者が他にいるだろうか? シンプルだからこそ絶望的に力の差を感じる、メルエムの「強」表現だった。
今回は『HUNTER×HUNTER』で絶望を感じた敵キャラの「強」表現を3つ紹介した。もちろん他にもヒソカ、イルミ、幻影旅団といった手強いキャラたちがいるし、さらに「暗黒大陸編」でも数々の強敵が登場する。
戦っているゴンたちは大変だろうが、絶望的に強い敵が次から次へと登場するからこそ、読者としてはワクワクしてしまうものだ。