■どうしてそんな設定があったのか?
『キン肉マン』の連載がはじまった1970年代といえば、『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンタロウ』などの巨大ヒーローものが放送され、人気を博していた時期。
その影響を受け、『キン肉マン』も連載開始当初は、宇宙怪獣から日本を守るヒーローという設定だったという。そもそも、連載がはじまる前に描かれていた読み切りでは「ウルトラマンのパロディ」としていたようだ。そのため、突如現れた巨大怪獣を倒すためにビームを出し、同じように巨大化してもまったくおかしなことではないだろう。
ただしヒーローといっても、『キン肉マン』はあくまでギャグ・ヒーロー路線だ。第3巻以降でも、キン肉マンがボケてミートくんがツッコむというやりとりにギャグ要素が垣間見られるし、“ビームを足から出す”という設定も笑えるポイントのひとつだったといえる。
テリーマンが“金の亡者”だった点に関しては、「キン肉マンとは対照的なライバルにしたくて、ドライなアメリカンとして出したはずなのに、いつの間にか勝手にすごくいいヤツに(なった)」と、電子版第2巻の「背表紙超人コレクション ザ・テリーマン」において嶋田氏が明かしている。
紹介したような大きな設定変更はまだまだあるのだが、当時も今も疑問を持たずにすんなりと受け入れられるのは、やはり“ゆでたまごによる唯一無二の作品だから”というところが大きい。
連載当初、『キン肉マン』はギャグ漫画だったが、のちにプロレスバトル漫画へと設定が変更されていく。読者の要望にこたえてのことだったというが、その後の特大ヒットを見ると変更は正解だったと言えるだろう。
筆者が『キン肉マン』と出会ったのは、キン肉マンとウォーズマンが戦う第9巻あたりで、すでに路線変更がされたあとだった。「怪獣退治編」と呼ばれる単行本第1・2巻をあとから読んで、あまりの雰囲気の違いに驚いた記憶がある。
だが当時はもちろん、今読み返してもしっかり笑えて泣ける名作なのは間違いない。現在の新シリーズでファンになった人も、ぜひ読んでみてほしい。