■『バキ』スペック

 板垣恵介氏による『バキ』の「最凶死刑囚編」には、正々堂々などとは無縁なキャラばかりが勢ぞろいしている。

 そのなかでもスペックは、群を抜いて卑怯かつ卑劣だ。握手をすると見せかけての不意打ち、その場にある物を利用して凶器にするなど、格闘家とは一味違う戦いを展開していた。花山薫との戦いでは格闘というよりも殺し合いに近く、何でもありの実戦そのものである。

 公園のベンチを使っての攻撃、隠し持った銃弾を花山の口の中にツッコんで爆発、と花山の美学に反することばかりしてみせたスペック。しかし彼はそのすべてを受けきって、拳のみでスペックをぶちのめす。そのままスペックは警察へと引きずられていくのだが、まさかの展開が続くことに……。

 なんとスペックは警察から拳銃を奪って再び花山の前に立つと、彼の両膝を撃ち抜くのだ。これによって絶体絶命のピンチになる花山だったが、すかさず反撃を繰り出しているからさすがである。しかし、スペックもどこから出したのか閃光手榴弾を使用し、危機を脱していた。

 最終的には、激しい応酬を経て花山に倒されたスペック。いくら小細工をしても、純粋な気持ちを乗せた拳には敵わなかったといえよう。

 

 卑怯キャラは、通常の敵と比べてもかなり強い印象を残す。自身が外道と分かっていながらもその姿勢を貫き通し、無様だろうと勝つことに対しての執念を持ち続けるからだ。良くも悪くも、作品にとって良いスパイスになっているといえるだろう。

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