1983年から『週刊少年ジャンプ』で連載が始まった、原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏による漫画『北斗の拳』(集英社)が2023年9月で40周年を迎える。
主人公・ケンシロウといえば、北斗神拳伝承者で弱き者を救う正義の味方、そんなイメージがあるが……一方の悪人には一切容赦しないという印象も強い。命乞いをしようが、逃亡しようがお構いなしとばかりに、秘孔を突いて破壊。そして、そんなときのケンシロウの放つセリフもかなり厳しい。まるで虫けらでも見るかのような目で、相手の心をえぐるような言葉を口にするのだ。
「てめえらに明日を生きる資格はねぇ!!」など感情を全開にするセリフもいいが、悪人たちに呆れ返った表情でポツリと言い放つケンシロウの毒舌セリフも印象深いもの。そこで今回は、『北斗の拳』の名シーンを振り返り、ケンシロウが拳ではなく言葉で悪人を一撃で仕留めたセリフを紹介していきたい。
■「くさい息を吐くのはそれぐらいにしておけ」
まずは、次々と郡都を壊滅させてきたケンシロウに、恐れることなく勝負を挑んできたバスクの副官であるバロナへの一言。バロナは常に「はぁーっ、はぁーっ」と呼吸を荒げている巨漢だが、ケンシロウは一瞥することもなく彼の口元を片手で制止し、「くさい息を吐くのはそれぐらいにしておけ」と一蹴した。
これにはバロナも口臭を意外と気にしていたのか、「む!」と顔を真っ赤にして恥ずかしがっていた。そして怒りをぶつけるかのように突進するも、ケンシロウの一撃によって地面に埋まってしまう。
悪口を言われて怒って飛びかかり、そして返り討ち……なんとも情けない姿だ。それにしても、相手が気にするようなことを顔色ひとつ変えずに突いて逆上させるケンシロウは、やはり毒舌の天才ではないだろうか。
■「汚ねぇツラ近づけるな!」
ケンシロウが初めて危機的状況となったのが、牙一族との戦い。それまでは危なげなく勝ち続けていたが、人質を取られたことで分の悪い展開となった。牙一族はアイリとマミヤを手に入れたことで強気に出ると、ケンシロウを試すかのように脅しをかける。
そのとき牙一族のひとりがケンシロウが何も出来ないことを良いことに、ニヤニヤ顔で近づきおまけに顔にツバまで吐きかける。そして「おらあ~手ぇだしてみろよコラ~~」「お~ん~ん~!」と顔がくっつきそうなほどの超至近距離で挑発したが最後、ケンシロウが顔色ひとつ変えずに「汚ねぇツラ近づけるな!」と言われ、ロクに反応もできないうちにボコボコに殴られて殺されてしまうのだった。
たしかに読者の誰もがツッコミを入れたくなるほどの顔の近さで、おまけにうっとおしい顔をしていたこのキャラ。的確としか言いようがない、ケンシロウの冷静すぎる返しだった。