■この時代に生まれた子どもの悲しき運命…ルイ・シャルルの末路 

 ルイ・シャルルは、史実ではルイ17世のことであり、マリー・アントワネットとルイ16世の次男である。

『ベルばら』でのルイ・シャルルの場合、物心がつくころにはすでに母・マリー・アントワネットとともに幽閉されていた。将来を案じられた王子は貴族から離され、一市民として成長していくこととなる。

 やがてルイ・シャルルは、自身が王位継承者であることも忘れていく。マリー・アントワネットの処刑が近づくころには庶民に混ざって「貴族のやつらをしばり首」と革命歌を歌い踊るのであった。この描写を見ると、その後、ルイ・シャルルはたくましく成長していったのではないかと予想ができる。

 しかし実際のルイ・シャルルはというと、悲惨な最期を遂げていた。史実によると彼が4歳の時にフランス革命が起き、彼自身も6歳でタンプル塔に幽閉され、8歳で両親が処刑。収監中にルイ17世となったルイ・シャルルだが、一説によるとその間、虐待を受けていたとも言われており、10歳で生涯を閉じたとされている。

 ちなみにルイ・シャルルは母の処刑を知らず、外で摘んだ花を母の部屋の扉の前に置き続けた、という逸話がある。この時代は厳しい処罰が子どもたちにも下される時代であったが、ルイ・シャルルが苦悩に満ちながらその人生を終えた事実には、深い悲しみを感じてしまう。

 

 少女漫画界の金字塔として知られる『ベルサイユのばら』は、フランス革命前後の舞台を背景に登場人物たちの壮絶な運命を描き出している。しかし、実際の史実はその想像を超えるものであり、激動の時代に不運な人生を送った人物も多い。こうした事実を踏まえ、今一度『ベルサイユのばら』をじっくり読み直してみてはいかがだろうか。

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