■来るべき時に向けて天津飯が仕込んだ新技

 鳥山明氏による『ドラゴンボール』(集英社)は、ストーリーが進むにつれて戦闘力のインフレが発生し、初期のキャラがどんどん置いていかれることになる。

 しかしそんな中でも修行を怠らず、秘策を編み出しセル編でも戦いの最前線に立ったのが天津飯。彼が18号を逃すために放った「新気功砲」は、ピッコロを瞬殺したセルをその場に張り付ける形となった。スーパーサイヤ人でもない天津飯が、その場にいたどのキャラよりも活躍して見せたのだ。

 初登場時は残忍な敵としてあらわれた天津飯だったが、根は真面目で修行熱心な武闘家。技の研究にも励み、ピッコロとの戦いでは魔封波まで習得してみせた。

 おそらく天津飯はこのときも地道に努力を続け、来たるべきときに備えていたのだろう。ただでさえ体力の消耗が激しい「気功砲」を連続で放つこの技は“捨て身”と呼ぶに相応しく、使用後の天津飯は力尽きてしまった。それ以降「新気功砲」が作中で登場することがなかったが、違う形でもう一度使用するところを見てみたい。

 読者としても手に汗を握ってページをめくってしまうバトル漫画の捨て身の一発。努力の末に放たれる一撃は、どれもとても印象に残るものだ。

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