■憎悪をまき散らす「バスク・オム」
最後は、『機動戦士Zガンダム』に登場した「バスク・オム」を紹介したい。
一年戦争後、旧ジオン軍の残党狩りを目的に設立された地球連邦軍の特殊部隊「ティターンズ」において、総司令官であり、階級は大佐。独特なゴーグルにスキンヘッドと、作中でもとくに異色の存在だ。
一年戦争時に捕虜となっていた彼は、条約違反の拷問をジオン軍から受けている。その際に、視力障害を起こしゴーグルの着用を余儀なくされ、さらには、その治療の放射線により後遺症を患っているという。そういった経緯もあり、連邦軍の高官になってからは、恨みを晴らすかのような残虐な行動をとり続けていく。
サイド1で起きた反連邦デモでは、鎮圧と称し毒ガス兵器を使い1500万人もの住民を大量虐殺。さらには、デラーズ紛争やエゥーゴによるジャブロー降下作戦では、敵味方巻き込むような攻撃命令を出しており、常軌を逸した非道ぶりを見せている。
私的に軍を使い、敵や味方、そして民間人かまわず殺戮し続けるバスク・オムは、権力の腐敗そのものであり、さらには、先の戦争が生んでしまった怨念のようなものすら感じてしまう。
今回は、『ガンダム』シリーズに登場した権力の腐敗を象徴するような地球連邦軍高官たちのトンデモ言動3選を紹介した。この他には『機動戦士Zガンダム』に登場した「ジャミトフ・ハイマン」や、『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』に登場した「アデナウアー・パラヤ」なども、地球連邦軍のクズ高官として有名であろう。
一方、今回権力の腐敗の象徴として紹介した「ゴップ」であるが、見方や作品によっては大変有能な人物として評価されることもある。『ガンダム』シリーズでは、キャラクターごとに詳細な人物設定があり、トンデモ行動さえもそれぞれに理由があるのだ。だからこそ、リアルと同様に、見る角度や立場によってその人物の評価も大きく変わる。
このように、深く多角的な考察ができるところも『ガンダム』シリーズの大きな魅力の1つではないだろうか。