■アイドルから拳銃、マイコンにホラーなど多岐に渡った情報誌
同シリーズは子どもたちの関心ごとを敏感にキャッチしながら発行を続け、結果として本のタイトルこそが当時の流行を映す鏡でもあった。
たとえば人物なら、多くの女子が振付を真似したピンク・レディの『大百科』をはじめ、松田聖子さん初主演映画を取り上げた『野菊の墓大百科』、プロ野球では『巨人軍大百科』だけでなくスター選手『原・江川大百科』も。そして当時大人気だったアクション映画スター『ジャッキー・チェン大百科』や『ユン・ピョウ大百科』などがあげられる。
人物での変わり種としては、80年代後半にTVの心霊企画で有名となった冝保愛子さんを『冝保愛子の〇〇大百科』などに起用し、心霊写真や恐怖話など子どもの「怖いもの見たさ」願望をくすぐった。80年代に大ブームとなったビートたけしさん扮するキャラクターを扱った『THEタケちゃんマン大百科』など、私見だが本シリーズは子ども向け芸能雑誌の一面も担っていたように思う。
他にも、現在なら「アレっ?」と思う『大百科』もいくつか存在する。たとえば『拳銃・マシンガン大百科』や『最新兵器大百科』では、恐ろしい武器の説明にルビ入り漢字や可愛いイラストが添えられており、大人になってから読み返すと少しだけ複雑な気分になった。
80年代前半に一部で普及していたマイコンも『マイコン大百科 入門編』『マイコン大百科 実用編』などで解説され、カービィやマリオなどの『ゲーム大百科』は攻略のみならずスペシャルまんが掲載など、どれもが子ども向けと思えないほどディープな情報と工夫がいっぱい詰まっていた。
多くの大百科を刊行した『ケイブンシャの大百科シリーズ』は、小学館の『コロタン文庫』など他出版社が追随するほどの大ヒットシリーズとなる。
だが、出版元の勁文社が2002年に経営破綻し、同社が発行していた他書籍とともに『大百科シリーズ』も廃刊。出版不況とささやかれ続ける昨今ではあるが、同シリーズのような夢とパワーが詰まった本の登場を心待ちにしたいと思う。