漫画やアニメの実写化は原作ファンにとっては不安が付きまとうものである。大好きなキャラクターやストーリーが実写化の際に改変されていたら……という恐れはなかなか解消できないものだ。
たいていの場合、公開前にキャストや監督などの情報が出るものだが、その段階でつい「その人で大丈夫?」と不安の声が上がることは少なくない。しかし第一印象から一転して、その役者が想像の何倍も作品のクオリティアップに貢献するいい芝居をしたときの感動はとても言い表せられないものだ。
今回は、そんなファンの不安を一気に跳ね除けた、実写化作品で見事な演技を見せた女優たちを振り返りたい。
■福田作品に見事ハマった橋本環奈
まずは、2013年に福岡でのローカルアイドル時代の写真が「1000年に1人の逸材」と話題になり、一気に知名度を上げスターの道を駆け上がった橋本環奈。
実写化作品としては、2015年に『暗殺教室』で人工知能の律を演じていたが、特におふざけシーンもない、現実離れしているほど“美少女”の橋本にぴったりのキャスティングだった。
それが、空知英秋氏の人気漫画を原作に、福田雄一監督がメガホンをとる実写映画『銀魂』でヒロイン・神楽役に抜擢されたことが発表されると世間はザワついた。神楽といえば、見た目こそ美少女であるものの、暴言や変顔、鼻をほじるなどの下品な言動も目立つ個性的なキャラだ。
しかし橋本はこの強烈な神楽というキャラを見事に再現。同作は他の役者の再現度の高さや原作へのリスペクトを感じる演出でかなりの高評価を集めることとなる。
橋本はこの後、同じく福田監督の麻生周一氏によるギャグ漫画の映画化『斉木楠雄のΨ難』でも、ヒロインの照橋心美を演じ、ぶりっこや変顔、オーバーリアクションなどを披露。2018年のドラマ『今日から俺は!!』(日本テレビ系)や2019年公開の映画『かぐや様は告らせたい〜天才たちの恋愛頭脳戦〜』など、以降、実写化作品に重宝される女優となった。
なお、2023年7月28日には、映画『キングダム』シリーズの最新作『キングダム 運命の炎』にも河了貂役での公開を控えている。これからも橋本の実写化作品出演の波は止まらなさそうだ。
■意外な悪女を演じた吉岡里帆
続いては、2022年公開の映画『ホリック xxxHOLiC』で女郎蜘蛛を演じた吉岡里帆。
吉岡といえば、「どんぎつね」(日清食品)や「パピコ」(江崎グリコ)のCMなど、ふわふわした優しい雰囲気と清楚な顔立ちが印象的な癒し系の雰囲気の漂う女優。
それが、CLAMP氏の原作漫画の『ホリック xxxHOLiC』に登場する女郎蜘蛛はロングヘアのベビードール姿のセクシーな女性だったのだから、発表時にはまさかのキャスティングに驚いたファンも多かっただろう。しかも女郎蜘蛛は、アヤカシを操る妖艶な悪女という役どころだ。
実写映画では、吉岡は金髪のウィッグに胸元やウエストが開いた艶やかな黒い衣装を身にまとい、外見のセクシーさは原作よりさらに増していた。作中では神木隆之介演じる四月一日君尋を誘惑するシーンもあり、意外なハマリっぷりを見せた。
同作の監督を務めた蜷川実花氏は、吉岡の起用について「これまでにこういった役を演じてきていない吉岡さんにお願いしてみるのはどうかと」「こういった露出度の高いコスチュームを着られているのを見たことがないので、そういった意味では賭けでもありました」とキャスティングの理由を語っている。その狙い通り、吉岡の癒し系というイメージを一気に払拭した画期的な作品となった。