SF漫画やアニメには、人工知能が深く関わるストーリーがある。なかには、その判断一つで人類の未来が大きく左右されることにつながるケースも……。人工知能は現実世界においても利用される便利な存在だが、活かすも殺すも人間次第。そんなテクノロジーの塊たちにまつわる、恐ろしいエピソードをいくつか紹介していこう。
■『新世紀エヴァンゲリオン』MAGI(マギ)
原作・監督:庵野秀明氏によるアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するMAGI(マギ)は、コンピューター技師・赤木ナオコによって開発されたシステムだ。
このシステムは、使徒との戦いのバックアップなどで大きな活躍を見せている。他にもネルフ本部やエヴァに関するシステムの管理などを行っているので、“ネルフの頭脳”と言っても良いだろう。
MAGIには開発者ナオコの“科学者として”、“母親として”、“一人の女性として”の3つの思考パターンが入っており、それによってバランスをとっている。ナオコはMAGIシステムを完成した直後に自殺してしまったが、娘のリツコが後を引き継いで十分な働きを見せていた。
そんなリツコは上司で愛人のゲンドウに裏切られたと悟ったときに暴走してしまう。そしてゲンドウと共に死ぬためにネルフの自爆を目論む……のだが、なんとMAGIがそれを拒否。3つの感情のうちの一人の女性としてのナオコの感情が、ゲンドウに対して働いてしまったのだ。
これを目の当たりにしたリツコは、MAGIの中のナオコが娘の自分ではなく好きな男を取ったことに絶望したうえで、ゲンドウに撃ち殺されてしまった。愛する存在二人に裏切られ死んでいくとは、悲惨な最期としかいいようがない。それにしても、人工知能が感情に左右されて人間の命令を無視してしまうというのは恐ろしいことである。
■『PSYCHO-PASS』シビュラシステム
最新のテクノロジーを利用した世界を舞台としたアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス』には、恐ろしい人工知能が登場する。それがシビュラシステムだ。“包括的生涯福祉支援システム”とされるシビュラは、全国民の精神状態を数値化したうえで、彼らが最適な人生を送るためのサポートをする存在である。これにより人々はわざわざ自分で考えなくても、自分にぴったりの道を進むことができるようになったのだ。
このシステムは治安維持にも役立っており、犯罪者はもちろん、“犯罪者となる可能性がある者”まで判別できるようになった。判別の基準は“犯罪係数”で、この数値が100を超えれば危険人物と認識され、最悪の場合は専用施設に入れられて一生出られない。おかげで犯罪は激減したが、人間らしい生き方というものは失われつつある。
シビュラによって生まれながらに人生が決まる世界でもあるので、社会から排除されまともな生活を送れない者もいるのだ。さらに恐ろしいのは、犯罪係数が危険値に達した者はたとえ何もしていなくても、この世界の刑事である監視官や執行官の判断で処刑しても良いとされる点である。
その際にはドミネーターと呼ばれる特殊拳銃を使用し、その者に狙いを定めるだけで良い。機械によって排除の判断が下され、使用者が引き金を引けば、対象は発射されたレーザーによって一瞬で弾け飛んでしまうのだ。
とはいえ、シビュラが果たして万能なのか?というと、そういう訳でもない。稀に、犯罪を犯していても犯罪係数が上昇しない者もいるからだ。そのせいで、平然と人を殺せる凶悪犯を見過ごしてしまうこともある。
人工知能にすべての判断を任せた結果、便利で安全な世界になってはいるが、それが人という生き物の幸せなのかどうかは分からない。