■『ヒロアカ』やっぱり基本はマーベル映画

 “個性”と呼ばれる超能力を持つ高校生たちがプロのヒーローを目指す『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平氏)。日常に溶け込んだ形でヒーローとヴィランを描く世界観などから、本作がアメコミの影響を強く受けているのは一目瞭然だろう。

 2015年「ダ・ヴィンチ」掲載の堀越氏のインタビューでは、『X-MEN』などマーベル・コミックの影響が大きく、その入りとなったのがサム・ライミ監督『スパイダーマン』(2002)だと語られた。

 さらにアメコミ原作の映画オマージュで話題にのぼったのは、第290話での荼毘のダンスだろう。これが、トッド・フィリップス監督『ジョーカー』(2019)でジョーカーが見せたダンスと似ているのだ。

 さらに、ヒーロー名は映画タイトルから、地名は『スター・ウォーズ』シリーズの惑星名から来ていることも有名だ。たとえば老年の男性ヒーロー“グラントリノ”は、同名の映画にクリント・イーストウッド監督『グラン・トリノ』(2009)が挙げられる。ロマンスグレーの渋い外見は、おそらく同作で主演も務めたイーストウッドのイメージだろう。

 同時に、グラントリノは『スター・ウォーズ』シリーズに登場する“ヨーダ”のオマージュとも言われる。主人公にとって“師の師”という役どころ、極めて小柄なトボけた老人、決め手はコミックス6巻で作者が言及している「ダゴバ感」。

 “ダゴバ”とは同作に登場する惑星の名前で、かつて主人公のルーク・スカイウォーカーがヨーダに修業をつけてもらった場所だ。このころのヨーダは、だいぶ歳をとってトボけた印象だった。それも含め、グラントリノをさして「ダゴバ感」というのは言い得て妙で、『スター・ウォーズ』ファンにはクスッと来るところだ。

 

 以上、映画のオマージュが使われているジャンプ作品を紹介した。

 お気に入りの作品にほかの作品のオマージュを見つけたとき、思わずニヤリとしてしまう人は多いはず。単純にそのシーンを見つける楽しさもあれば、そこに込められた作者の意図を探る楽しさもある。なんだか得した気分だ。

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