『北斗の拳』に『チェンソーマン』も…“映画のオマージュ”が見られる『少年ジャンプ』の人気バトル漫画の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳【究極版】』10巻(徳間書店)
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 頭のなかにあるイメージを視覚化して表現するという点で、漫画と映画は近い領域にある。自然と漫画家が映画作品から影響を受けることは多くなるだろうし、その逆もまた然りだろう。今回はとくに安定的な人気を誇る『少年ジャンプ』のバトル漫画に注目して、映画オマージュが見られる作品について紹介したい。

■『北斗の拳』モヒカン暴走族といえばあの映画

 核戦争後の荒廃した世界を舞台にした『北斗の拳』(原作・武論尊氏、作画・原哲夫氏)。本作に登場するモヒカン頭でバイクやバギーを駆って弱者をいたぶる暴徒たちの姿は、すっかり“世紀末”の代名詞となった。

 このような世界観が、ジョージ・ミラー監督『マッドマックス2』(1981)に影響を受けているのは有名な話だ。『北斗の拳』生誕30周年記念特別インタビュー「北斗語り」のなかで、原氏本人も明らかにしている。

 それとは別に、現在『インディ・ジョーンズ』最新作で話題のハリソン・フォードがかつて主演した映画、リドリー・スコット監督『ブレードランナー』(1982)も、『北斗の拳』に大きな影響を与えているという。

 原氏の公式サイト掲載のキャラ紹介によると、同作に登場する“ロイ・バッティ”というキャラクターの姿が、ラオウの目力のもとになったそうだ。

 そう言われると、プラチナブロンドの短髪やすべてを見透かされるような強い眼差しだけでなく、主人公を追い詰める強さや圧倒的なカリスマ性、自身の感情の変化に戸惑う姿まで、あらゆる面がラオウと重なってくる。ファンにとってはたまらない作品になるだろう。

■『チェンソーマン』はホラー映画の宝庫

 悪魔と戦うデビルハンターの活躍を描いた『チェンソーマン』(藤本タツキ氏)。

 かなりの映画ファンとして知られている藤本氏だが、本作においてもっとも影響を受けた作品はトビー・フーパー監督『悪魔のいけにえ』(1974)であると、2020年「リアルサウンド」掲載の公式インタビューで明言している。

『悪魔のいけにえ』は不気味なマスクをかぶってチェンソーを振り回す殺人鬼“レザーフェイス”がテキサス州に帰郷した男女5人を次々と手にかけていくホラー映画で、2003年にリメイクされたマーカス・ニスペル監督『テキサス・チェーンソー』でも知られている。チェーンソーといういかにも凶暴なアイテムはもちろん、作品全体から漂う不気味さや陰鬱さも、どこか共通したものを感じさせる。

 また「ジャンプルーキー!」の「【第66回】担当作家 藤本タツキ先生Q&A!」によると、悪魔や魔人のデザインは映画やゲームのキャラデザインをいくつか複合したものだという。インタビュー内で『ヘルボーイ』や『アート オブ アリス マッドネス リターンズ』などの画集を購入したと明かしていた藤本氏だが、言われてみればサムライソードの“刀の悪魔”のデザインは、ギレルモ・デル・トロ監督『ヘルボーイ』(2004)に登場する“クロエネン”というキャラに似ている。

 一方で公安のデビルハンターに関しては、黒スーツに白シャツ、黒ネクタイで悪魔と戦う、おまけにヘビースモーカー(アキと姫野だけだが)と来たら、映画ファンなら誰もがフランシス・ローレンス監督『コンスタンティン』(2005)を連想するところだろう。

 さらにシーン別に見ると、第49話でチェンソーマンが“サメの魔人”にまたがって“台風の悪魔”と戦うシーンは、まさにアンソニー・C・フェランテ監督『シャークネード』(2013)だ。

 実際、続く第50話のタイトルは「シャークネード」。サメごと海水を巻き上げた巨大竜巻が街を襲い、飛んでくるサメをチェンソーで撃退するという映画だが、『チェンソーマン』ではサメとチェンソーで竜巻に立ち向かう形になっているのが面白い。

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