■悪魔に身をゆだねて人ははじめて“人と成る”…?「ヒトヒトの実」
最後に、『ONE PIECE』のマスコット的存在であるチョッパーが食べた、「ヒトヒトの実」を紹介しよう。
もとはトナカイだったチョッパーが食べた悪魔の実で、二足歩行や人間の言語を操ることができる、文字通りヒトになれる能力である。
トナカイの群れから外れ孤独な日々を過ごしたチョッパーにとっては、この能力があってこそルフィたちとともに壮大な冒険に出ることにつながったため、結果的には救いの実であったことは間違いないだろう。
しかしこの悪魔の実は我々人間に、いったいどのような能力をもたらすのだろう? 作者の尾田栄一郎氏いわく、「人が人らしく生きる」とのことである。
誰しも一度は「鳥になって空を飛べたら……」「犬は良いなぁ、宿題がなくて……」など、動物に対する憧れを抱いたことがあると思うが、「ヒトヒトの実」を食べれば、そうした願望を持たなくなり、人としてのプライドが高くなるのかもしれない……? だとするならば、「ヒトヒトの実」は我々人間にとって文字通り「夢のない」悪魔の実であることは間違いないだろう。
だがこの「ヒトヒトの実」を含む“動物(ゾオン)系”と呼ばれる悪魔の実には、大仏・恐竜・鳥など何かしらのモデルが存在する。チョッパーの食べた「ヒトヒトの実」にも、実は何らかのモデルがあり、今後その能力が明らかになるのかもしれない。……そんな想像をしながら読み進めていくのも、『ONE PIECE』の楽しみのひとつであると思う。
その総数は未だ未知数である悪魔の実。作中では、悪魔の実の図鑑なるものがあるようだが、どんな能力が得られるかを知らずに悪魔の実を食べ、イマイチ使いどころのない能力を得たキャラも実際は多いことだろう。カナヅチになるだけでなく、使えない能力を得る可能性があるとは、つくづく“悪魔的”であると言えよう。