昔読んだ漫画の中で、「とにかくこのコマだけは覚えている」という印象的なシーンは誰の心にもあるだろう。それが2ページにわたって描かれた、作者渾身の「見開き」の大ゴマなら尚更だろう。今回は、多くの人の心に残り、作品を読んだことがある人ならきっと覚えている「少年漫画の名見開き」を振り返りたい。
まずは、2022年12月3日から公開された映画『THE FIRST SLAM DUNK』が大ヒットを記録した、井上雄彦氏のバスケ漫画『SLAM DUNK』。映画を機に、新たなファンを獲得している同作だが、映画でも描かれた山王戦のラストシーンは原作漫画では特に印象的なコマとして描かれている。
それは、試合時間ギリギリのところで流川楓が桜木花道にボールをパスし、桜木が試合終了の合図と同時に見事にゴールに入れるシーン。その後桜木は流川に向かって歩き出すのだが、その後2人がハイタッチを交わすコマが見開きページで描かれていた。
その次のページではお互い恥ずかしそうに「ぷい」と目を逸らすのだが、2人の心が初めて通じたかのようなこのシーンは、ポスターやフィギュアなど、多くのグッズにもなっており、今でもファンの間で語られる同作を代表する名コマとなった。
ちなみに映画では宮城リョータが主人公として描かれたので、関係性を積み重ねてきたことによるこのシーンの真の熱さは、映画だけでは十二分には伝わらないかもしれない。ぜひ原作漫画も合わせて読んでほしい。
続いては、諫山創氏による『進撃の巨人』。印象的な見開きページといえば、物語の序盤第3話で、5年ぶりに超大型巨人が現れるシーンだろう。5年前、目の前で母親を巨人に食い殺されたエレン。訓練兵を卒業したエレンは、再び壁の内側に攻めてきた巨人に対して「5年振りだな…」と語りかける。
煙に包まれた圧倒的存在感の超大型巨人とエレンの目が合うシーンは、同作のアイコンであるといってもいいだろう。エレンの巨人姿よりも、この全身の筋肉が剥き出しになった超大型巨人の方が印象深いという人も多いのではないだろうか。
続いては、藤田和日郎氏の『からくりサーカス』。最終巻である43巻では、序盤でナルミに助けられた主人公のマサルが、作中での長い時を経てナルミの背後で加勢して戦うという見開きがある。
このシーンは臨場感のある画力と画角のインパクトだけでも印象深いが、ナルミには背後で加勢している人間がマサルであることはわからない。作中でマサルが成長したことが絵だけで感じられる、ストーリーを読み進めている人こそ感動できる見開きの演出となっている。