1970年代末から1980年代前半にかけて一大ブームを巻き起こした、松本零士さんの『銀河鉄道999』。1981年の連載終了で完結とされていたが、その後も派生作品が発表され、2018年には原作:松本零士さん、漫画:島崎譲さんによる『銀河鉄道999 ANOTHER STORY アルティメットジャーニー』が40周年記念作品として連載開始された(現在は休載中)。
近未来の宇宙を舞台とする本作では、機械の身体を望む主人公・星野鉄郎と謎の美女・メーテルが、999号に乗ってさまざまな星を巡る姿が描かれる。それぞれの停車駅(星)は問題を抱えていたり、とんでもない習慣が横行したりしており、2人は毎回何かしらに巻き込まれる。今回は、そんな中でも筆者がとくに行きたくないと思った3つの星を紹介していく。
※本作は漫画とアニメで内容が大きく異なるが、この記事内ではおもにアニメのストーリーを取り上げている。
■権力者に支配される「球状住宅団星」
「球状住宅団星」は、その名の通り球状の家がたくさん集まった星である。この駅に到着して間もなく、メーテルは一帯を支配する権力者である機械化人の男にさらわれてしまった。彼は星にあるすべての球状住宅団の所有者で、誰も逆らうことはできず、それを良いことにやりたい放題していたのだ。
鉄郎はメーテルを助けに行くため機械化人の男の家に向かう途中で、星野鉄五郎という人物に遭遇する。彼はさらわれた恋人・さくらを救うため、機械化人の男を倒そうと計画を進めていた。
その後、機械化人の男に捕まってしまった鉄郎は鉄五郎に助けられるが、そこで2人はさくらの墓を発見する。機械化人の男はさらって来た女たちを処刑していたのだ……。怒りに燃える鉄五郎は爆弾で城を破壊し、ついに機械化人の男を倒すことに成功する。
ここまでなら恋人の仇を討った鉄五郎の美談で終わるのだが、彼は目的を達成した途端、今度は自分が権力者になるなどと言い出す。鉄郎が「さくらさんが悲しんでもいいのかい」と言っても、まるで聞く耳を持たない……。
自分も権力者に苦しめられたはずなのに、権力に目が眩んで我を失った鉄五郎。そんな人間が支配する星などまっぴらである。もっともメーテルも指摘していた通り、彼の権力は長続きしないと思われるが、そうなればまた新たな権力者が生まれるだけなのだろう。
■略奪こそすべてとする「惑星アリババ」
「惑星アリババ」に向かう途中、999号は何者かによる砲撃を受け、駅から離れた砂漠の中央に不時着する。列車から出て街へ向かおうと決めた鉄郎とメーテルだが、ここは盗賊が多いことで有名な星。案の定、彼らの前に突如として盗賊が現れ、持っているものを出し、服を脱ぐよう要求してくる。
こうして身ぐるみを剥がされた2人だが、それだけに留まらず、捕虜として盗賊の館へ連れてこられてしまった。挙句、すべての盗賊の頂点に立つ女盗賊・アリババから、“あたしを楽しませれば自由にしてやろう”と無茶苦茶な取引を持ちかけられる。しかも彼女を満足させられなければ、星に生息する怪鳥ロックのエサにされてしまうという……。
盗賊だらけのこの星では、略奪こそがルール。鉄郎は「盗ったり盗られたりなんて呆れた星だよね」と言っていたが、時代や場所を問わずそうした人間は少なからずいる。それだけに、こんな星には間違っても行きたくないとしみじみ思わされる。怪鳥ロックが機械人間である盗賊たちを食べ尽くしてしまったのを見て、なんとか溜飲が下がった。