ラオウ、範馬勇次郎、ベジータ…読者を驚かせた少年漫画の絶対的ボスキャラたちの「思いがけない優しさ」の画像
ゼノンコミックスDX『北斗の拳【究極版】』10巻(徳間書店)

 漫画やアニメに“絶対的強者”として登場するキャラクターは、その強さゆえに常に近寄りがたい雰囲気を醸し出しているものだ。しかも、あまり自分のことを話したりもしないため、何を考えているのかもよく分からないことが多い。

 一見すると人の心がないのではと思ってしまいそうだが、そんなキャラクターであっても、時として優しさを垣間見せる瞬間がある。しかもそれが、ここぞという時に見せる優しさだからこそ、普段の強面な態度とのギャップによって、より印象深くなると言えるだろう。そこで今回は、絶対的強者キャラの中でも特に有名な3人が見せた、思いがけない優しき一面を紹介していきたい。

■ラオウが実弟トキとの戦いで流した涙

 まずは、原作:武論尊氏、作画:原哲夫氏による『北斗の拳』に登場するラオウだ。ラオウは北斗4兄弟の長兄だが、北斗神拳を伝承できないと知ると自らの野望を果たすため拳王軍を組織して一大勢力を築き上げる。

 ラオウは世紀末覇者となり、力によって世界を統一しようと考えていたので、立ち塞がろうとする者には容赦しない。確実に死に至らしめて、相手の勢力を恐怖で支配してしまう。しかし、そんなラオウにも、唯一優しさを見せた場面があるのだ。

 それが実弟であるトキとの戦いである。トキは病に冒されながらも武人として、ラオウと戦うことを望んでいた。死を覚悟の上で決戦に挑むトキだったが、その弱った体ではラオウに致命傷を与えることができなかった。

 ラオウもそんな弱り果てたトキの姿を見て涙すら流してしまう。そして、トキは完全に負けを認めてラオウの手によって殺されると覚悟した瞬間……ラオウは拳をあえてトキから外して地面を殴りつけたのだ。「拳王をめざした男トキは死んだ!! ここにいるのはただの病と戦う男 トキ!!」ラオウはそう告げると、トキに背を向け「体を愛(いと)えよトキ……」と気遣う言葉を掛けた。

 これまで戦いを挑んできた者は例外なく命を絶たれてきたラオウ。しかし、実の弟であり、死を覚悟してなお自分を超えようと目指したトキだけは、やはり特別な存在だったのだ。

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