『修羅の門』虎砲に『鉄拳チンミ』通背拳…“相手に密着させて衝撃を伝える”バトル漫画の必殺技の画像
月刊少年マガジンコミックス『修羅の門』(講談社)

 バトル漫画に登場する必殺技のうち、作中で1、2度しか見せ場のない技もあれば、何度も登場する技もある。どちらかというと何度も登場する必殺技のほうが、それだけ読者の記憶にも残るもの。『ドラゴンボール』の「かめはめ波」や『ダイの大冒険』の「アバンストラッシュ」のように、師匠から受け継がれ、序盤からラストの展開まで使われるケースもある。

 さまざまな必殺技があるが、筆者は拳や掌を密着させて衝撃を伝える技が大好きだ。なかでも、作中に何度も登場するからこそ重みのある必殺技を3つ紹介していこう。

■拳を添えて布団を打ち抜く!? 『修羅の門』陸奥圓明流の代表的な技「虎砲」

 まずは、川原正敏氏による『修羅の門』(講談社)に登場する「虎砲」だ。
 主人公である陸奥圓明流の陸奥九十九が、神武館の四鬼竜の1人である陣雷浩一に使ったのが最初だった。のちに海堂晃や飛田高明、片山右京などにも披露している必殺技なのだが、当初は龍造寺徹心に奥義「無空破」と勘違いされていたな。

 どちらも拳を相手の体に密着させ、全身のパワーを一気に打ち放つ技という点では同じである。「虎砲」を喰らった陣雷は胸が陥没するほどの大ダメージを負っており、その凄まじい威力に衝撃を受けた。

 九十九が言うには、「虎砲」は布団に拳を添えた状態で打ち抜くことができるらしい……。そんなことってできるのか!?と、筆者も布団に対して試したことがある。もちろん布団はビクともしなかったが……。

 もちろん、鬼のような鍛錬が必要であり、付け焼刃でできるようなものではないのが陸奥圓明流の必殺技なのだが、それに対抗しようとしたのが四鬼竜の天才・海堂晃だ。

 こちらも凄い。なんと海堂は、ボウガンを腹に当てた状態で、発射させると同時にかわすという特訓を繰り返す。しかも最後は、矢じりが付いた状態でクリアしていたな。

 本番の闘いでは特訓の成果を見せ、「虎砲」をかわして九十九に「双龍脚」を浴びせた海堂。この「双龍脚」も、瞬時に両方の回し蹴りを叩き込むという技でとんでもない技だった。

■どれだけ強くなっても必殺技とは不変のもの! 『鉄拳チンミ』チンミの「通背拳」

 次は、前川たけし氏の『鉄拳チンミ』シリーズ(講談社)に登場する「通背拳」だ。これは片方の手のひらで足を踏み込みながら突くという技で、自らの体重を数倍にして威力を増すという技である。

 主人公・チンミがヨーセン道士のもとで学び、凄まじい鍛錬の末に体得したこの「通背拳」は、彼の代表的な必殺技として、ボス級のキャラはもちろん、ザコキャラにも使われている。

 多勢の敵にも有効であり、作中にはシリーズを通して何度も登場しているお馴染みの必殺技だ。どれだけ強くなっても使用するあたり、まさに“不変の必殺技”といえるだろう。

 もともと体格に恵まれていないチンミがパワーを補うために覚えたものだが、“気”を扱うだけに多用すれば当然ながら疲労も増していく。

 作中でチンミが何度も放った相手が、『新鉄拳チンミ』カナン自治区編に登場したボル将軍だろう。シリーズを通して最大最強の難敵であり、「通背拳」も見ただけで会得してしまうほどの天才格闘家。彼と戦う前、これまた強敵の憲兵隊長ソウビと激戦していただけに、チンミが勝てるのか心配になるほどの面白さだったな。

 筆者的に一番好きだったのが、カナン自治区編の序盤で少年キリと漁師ボウロを救出するシーンだ。チンミをかばったことで山送り(強制労働所の工場)になってしまった2人を助けるべく、チンミは単身で敵陣へ乗り込む。

 工場の入口手前にある吊り橋で追い付き2人を助けるのだが、その後、10人以上の憲兵たちが追いかけてくる。そこでチンミは吊り橋に「通背拳」を放つのだが、なんと橋がうねりをあげ、憲兵たちはみんな浮き上がって川へと落とされてしまうのだ。このシーンは読んでいてなんとも痛快だったな。凄まじいほどの破壊力だった。

 まあ、チンミの凄さはこれだけのことをやってのけたのに一向に自慢せず、救出できたのもみんなの協力のおかげと考える精神だろうと思う。

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