■実は誰よりも人間らしい? 南烈

 最後に、豊玉高校の南烈。相手チームのエースに怪我をさせる“エースキラー”の一面が印象的だった南。流川と翔陽の藤真健司と、本作屈指のイケメンキャラの顔面に肘を入れたことで、女子の怒りを買ったキャラでもあるだろう。

 しかし、のちに南のこの行動は、恩師である北野監督を豊玉に呼び戻すため、勝ちに執着した結果だったと分かる。だからといって行為が正当化されるわけではもちろんないが、北野監督とのやりとりからは、ただただバスケットが好きで北野監督が好きなだけの、純粋無垢な顔が透けて見える気がする。そう思うと、試合後に流川が泊まっている宿を尋ね、言い訳もせず気まずそうに「………スマン」と頭を下げて薬を渡す場面も、どこか子どもの仲直りのようで可愛らしくもある。

 必死なあまり誤った選択を続けてしまい、迷いながらも軌道修正ができないままズルズル進んでしまう。人間なら誰しも起こり得ることで、大人になればなるほど“自分もそういう時期があった”としみじみ思い返すことが増えてくるだろう。

 後半の南の不調の原因が、“流川に対する罪悪感やプレッシャーではないか”と推測したプレス席の記者が「“エースキラー”も人の子か」と言うシーンがあるが、それこそまさに等身大の人間であり、この人間くささもまた、大人になった今だからこそ分かる南の魅力かなと思う。

 

 以上、大人になって良さに気づいた、隠れた男前キャラを紹介した。子どものころとはまた違う目線で、あのころ気づかなかったキャラクターの魅力に気づくことも、大人になった証なのかもしれない。

  1. 1
  2. 2
  3. 3